リオ・ナユ
反応
カイリはシュウの猫を手に入れた!!
「なぜわたしの猫を・・・!というよりナユ殿。その姿は一体何なんです?」
カイリがまたほんわかとした様子でシュウの猫を抱いて撫でているのを生温かい目で見ていたナユはピク、と体を動かせた。そして、うまく穴を開けて出している尻尾がピンと動く。
「・・・これはその・・・あれです、えっと・・・コスプレ?」
「?ふざけた格好をする暇があったらとっとと仕事と明日の準備でもしてもらえませんかね。」
シュウは呆れたように言ってナユの耳をひっぱった。
「いっ」
「・・・。」
シュウが茫然としている隙に、皆は執務室を出た。
「で、この子でどうするつもりなんですか?」
「さっきリオがやってきたって事は、多分また夜から抜け出してどっかで暴れてきたんだと思うんだけどね?」
「まあ、そうでしょうね。」
「だからいくらリオでもひと眠りくらいはするでしょ。てことでリオの部屋に行ってみよう。」
あまりの計画性のなさにナユは一瞬、ほんとにカイリが過去に英雄だったのか疑いかけた。
部屋につくと鍵がかかっていたのでやはり中で眠っている様子である。
「じゃあルック、ちょっとこの子を中に置いてきて、それから内側の鍵を開けてくれるかい?」
「ちょ、なんで僕が?」
「だって君しか出来ないじゃない。ここまで付き合って今さら嫌だとは言わせないよ?」
付き合ったというより無理やり付き合わせたんじゃないか、とルックは口をぱくぱくさせたが、相手は天魁星の中でも年季のあるクワセモノ。反論しても無駄と悟ったのか、黙って猫をうけとり消えた。
「でもカイリ、これじゃあ俺ら、あいつの反応分からないじゃないか。かといって中に皆で入れば絶対リオは気づくだろうし。」
「まあ、そうだけど、ここからのぞくくらいしか出来ないよ。一瞬くらいは反応見られるんじゃないかな。」
・・・適当すぎる。
そっと、開けたのだろう、あまり鍵の開ける音はしなかったがルックがもどってきた。
カイリが器用にそっとドアを開け、皆がこそっとのぞいた。
猫はルックがリオのベッドにそっと置いてきたようで、今まさにリオの頭のほうへ歩いているところであった。
4人で黙って見ていると、布団がピクリ、と動いた。
もぞっとまた動き、ぼんやりしたリオが起き上がる。そして猫と目があった。
!!と思った瞬間、まがまがしい黒い何かがナユ達を襲ってきた。
「守りの霧!!」
テッドが慌てて唱えた。魔法をはじく可能性は20%くらいのはずだが運よく全員、ソウルイーターの「黒い影」(敵全体に500のダメージ)をはじくことが出来た。
「・・・思いっきり気づかれてるじゃないですか・・・。」
ドキドキしながら呆れたようにナユが言う。てゆうかあの殺戮魔、全員抹殺する気か!?
「何する気か様子見てたら・・・何つまらない事してる訳?僕の眠りをさまたげてタダで済むと思ってるの?」
さきほどのまがまがしい魔法と同じくらいまがまがしい笑顔でリオはゆらりと立ちあがった。
「ど、どうする!?」
テッドが焦ってカイリに言った。ルックを見れば移動魔法の準備をしている、これ絶対一人で逃げる気だ。
「んーそうだねぇ。」
こんなに切羽詰まった状況だというのに、相変わらず呑気な様子でカイリは小首を傾げた。
「とりあえず、ナユ、ごめんね?」
「は?」
何を・・・とカイリの方を振り向くとそこにはニッコリしたカイリの笑顔。
そして、え?と思っているうちにトン、と軽く押され、ナユはリオの部屋に足を踏み入れる状態になった。
「そんなに可愛いナユなら、俺はぜったいリオもツボだと思ってるんだよね。ちょっと萌え気味なリオが見たいって思ってたんだけど・・・仕方ないか。諦めるよ。じゃあお二人さん、仲良くね。」
「て、ちょ、何言ってんだカイリ?お前、リオがどう思ってるか分かってた訳・・・」
驚くようなテッドのセリフは、最後はこもって聞こえた。
なぜなら相変わらずニッコリとしたカイリが内鍵のロックをかけた後、ゆっくりとドアを閉めたからである。
「・・・は・・・?」
ナユは茫然とその場に立ち尽くした。
ドアを挟んだ向こうでは、ルックのいいのかい?て声が聞こえたあとシーンとしてしまった。
「・・・え・・・?」
事態を把握できてないまま立ち尽くすナユ。背中に痛いほどの視線を感じ、思わず尻尾が垂れた。
「・・・貴様・・・その格好は一体どうゆうつもり・・・」
相変わらず不機嫌MAXの声でリオが言った。
ナユはしぶしぶリオの方を振り向いた。
気づけばすぐそばにリオはいた。また気配が感じ取れなかった。自分の間抜けな姿とリオの不機嫌な様子に思わず俯いていたナユだが、リオがすっと手をのばし、ナユの顎をもって顔を上にあげさせた。
ナユはといえば耳も尻尾も垂れ、おずおずとした感じで見上げている。
リオはいつものうすら笑いではなくなんだか険しい顔をしていた。
「ちっ・・・」
え、舌打ちですか。
カイリさん、これのどこがツボなんですか!?ますます耳をたらし、ナユは内心でカイリに突っ込んだ。
「ねえ、何黙ってるの?僕は貴様に聞いたんだけど?」
「え?ああ・・・。」
そこでナユはジーンとのやりとりを説明した。
「へえ・・・ジーンがね・・・」
「ちょっと、何を考えてるのか知りませんが、ジーンさんには何もしないで下さいね!?」
「へえ。そんな事されてかばうんだ?」
「・・・後が怖いし・・・。それにまずはこれをどうにかしてもらわないとだめだからです。」
「まあそりゃそうだろうね。」
リオはそう言ってからナユの顎にかけていた手を離し、またベッドへと向かった。
「じゃあ、もう行けば?おやすみ。」
背を向けたままリオは手をヒラっとさせて言った。
ナユは拍子抜けした。
いつもならムダにナユをからかって遊ぶか、もしくはそのままベッドにでも引きずり込まれるところだというのに?
「す・・・」
「す?」
また横になろうとしていたリオがナユを見ることもなく繰り返した。
「すみませんね!!おじゃましました!!なんだっていうんだよ、バーカ!!」
そう言うと、ナユは踵を返してドアを開けようとし、ガチャガチャとノブをまわしてから鍵がかかってる事を思い出して鍵を開け、乱暴にドアを開けて出て行った。