リオ・ナユ
とりあえず近くに宿屋もないままなので、森の中でそのまま駐屯することになった。
駐屯とは言っても、いつものように少人数ではあるが。
ナユにリオ、ナナミ、ビクトールにフリック、シーナと後はコウユウ。
しょっちゅう連れまわしているルックがいないのは、ナユいわく、紋章の事でジーンが何か言ってきたら即座に知らせてもらわないといけないから、だそうである。
「お、あっちに水場があるじゃん。よう、ちょっと水浴びでもしようぜ、どうも埃っぽいし。」
テントを皆で張ったのち、シーナが向こう側を見てから皆に、特にナユに言った。
「はあ・・・。」
ナユはあまり人前で脱ぎたくはないと思った。なんか尻尾とかが気になる。
「お前らで先にいけば?どうせ全員で行くほどの広さじゃないし?僕はおなかが空いたからね、先にコレ、借りるよ。てことで貴様は何か作りなよ?ナナミはとりあえず後でコレと一緒に浴びれば?」
リオが指示をした。
たいてい傍観者に徹する(といっても自分が不利ではない場合のみ)というのに、とナユは思った。
「え?あたしも料理するよ?」
ナナミが言った言葉には腐れ縁もシーナも全力で首を振り、とりあえず休憩しておくよう頼んでいる。
コウユウは兄弟分が気になるのか、そんな皆の会話も上の空の様子であった。
ちょうど料理が出来た頃には先に行った4人も戻ってきていたので全員で食べた。
食後、ナユとリオ、ナナミの3人は池に来た。
「とりあえず2人ではいってくれば。僕がここで見張りをしてあげるよ?」
「わーリオさん、優しい。でも一緒でもいいんじゃないの?」
「何言ってるんだよナナミ、一緒でいい訳ないだろ?てゆうかあなたも見張りってどういう風のふきまわしです?」
「別に?シーナがいる限りはまぁしておいたほうがいいんじゃないかってね。」
「あなたがナナミを覗かない保証だってないですよ。」
「僕が?僕は他には興味がない。」
そう言うと、リオはさっさと行け、とばかりに手をひらひらさせつつ来た道の方を向いて座った。
「リオさんってほんとにナユが好きなのねー。」
2人で水の中に入った後、軽く泳ぎながらナナミが言った。
血がつながっていないとはいえ、昔からずっと仲のいい姉弟で育った2人は一緒に水浴びする事に関してはまったくもって無頓着であった。
「え!?な、何で?」
「だって他には興味ない、なんてー。あんただけにしか興味ないって言われてるようなもんじゃない。」
「いや、そんな事は言ってないだろ?」
そう言いつつも、ナユは赤くなりながらそっと、向こう側で棍を掲げ持ちながら座り、テントの方をぼんやりと見ているリオをうかがった。
・・・ほんとに?ほんとにそう見える?ナナミ?あの人が僕が好きなように、見えるの?
ナユは心の中だけでそう呟いていた。
「ねえ、ナユ・・・。」
「・・・えっ?あ、ああ、何?ナナミ。」
「もう。お姉ちゃんっていいなさいって言ってるでしょー?えっと・・・あのね・・・?」
「?」
「あーやっぱ、いい。ごめん。」
ナユがなんだろうと首を傾げていると、ナナミは何かを言おうとして、やはりいい、と口を閉ざしてしまった。
最近たまにこういう事がある。
ナナミ、いったいどうしたんだろう、とナユは心配したが、ナナミが、「あがるわよー。」と隠しもせずにそのまま上がろうとしていたので慌てて、ちょっと、と言いながら駆けよっていった。