リオ・ナユ
「す、すごい。すごい、ナユっ。・・・ナユ・・・?」
唖然とその様子を見つめていたナナミがナユを見ると、すでに意識のないナユが地面に倒れていた。
「や・・・やだやだやだっ。ナユ、ナユっ、しっかりしてっ。」
ナナミはかけよってナユを抱きしめた。
「ふふ・・・少し驚かされましたが・・・どうやら彼は力を使いきってしまったか何かのようですね?ではもう一度、こちらの力を使わせていただきましょうか。」
「・・・反撃できないやつに攻撃?あいかわらず情けないね?」
ナナミがナユを抱いたまま、ギュッと目を閉じると、どこからか声が聞こえてきた。
「だ、誰だ!?」
ネクロードが聞いている。ナナミはホッとしたように顔を上げた。
なぜか、彼がいれば大丈夫なような気がした。
「誰?おまえに名乗るつもりはないけどね、僕の名前がもったいない。」
「っリオ・マクドール!!」
「なんだ、覚えてるんだ?だがおまえにフルネームで呼ばれると虫唾が走るね?」
そこにはリオがいた。
ナナミは涙を流しながらさらにギュッとナユを抱きしめた。
「ナナミ。ナユをかつげるか?」
リオに聞かれて、ナナミはうなずく。
「よし。では今すぐここを去れ。」
「リ、リオさんは・・・?」
「僕は大丈夫だ。早く。」
「は、はいっ。」
ナナミははじかれたように動きだし、ナユをおぶさった。
「何を・・・余裕ですね?わたしがそれを許すとでも・・・?」
「許す?おまえの許可など必要ないだろ。それこそ俺がおまえを許す、とでも・・・?」
「何をするというのです・・・?わたしには普通の攻撃は通じないのですよ?」
「俺が普通だと思っていたのか、お笑いぐさだな・・・?それに通じようが通じまいが構わない。今ここでおまえを追い払えればとりあえずはそれでいいんだからな。」
リオは右手を掲げた。
抑えるつもりなど、ない。
手から黒い影が漏れだす。
ちらりとナナミを見れば、すでにナユをおぶって走り出していた。
リオのこの紋章の影が漏れだすと同時に、なぜかあの2人を包み込むように淡い緑の光が。
リオはニッコリとした。
やはり・・・アレには「死神」の鎌は届かない。
「さあ、始めようか・・・好きなだけ暴れるがいい・・・ソウルイーターよ・・・」
先ほどの忌まわしい光よりもさらにまがまがしい闇があたり一面に広がる。
リオがうっすらと笑うなか、くやしそうな、腹立たしそうなネクロード(おそらく影)やそのまわりにまだいたゾンビはすべてその恐るべき暗黒の闇に飲み込まれていった。