リオ・ナユ
起床…ティント編
「ナユ・・・大丈夫だよ・・・大丈夫だからね・・・絶対お姉ちゃんが守ってあげるから・・・大丈夫だから・・・」
ナナミの声が聞こえたような気がした・・・。
「大丈夫だから・・・ナユ、大丈夫だから、大丈夫だから。ね、ね、ね、目を開けて・・・」
ナナミはずっとベッドの傍らで祈っていた。
ティントから逃げてきて、もう2日がたつ。
その間、ナユはずっと意識がないままであった。
「ナナミ、少しは休め。」
「リオさん。ううん、大丈夫だよ、あたしは全然大丈夫。・・・そういえばちゃんとお礼、言ってなかったね。ありがとう、ほんとにありがとう、リオさん。」
部屋に入ってきたリオに、ナナミはお礼を言った。
「別に礼はいらないよ?頑張ったのはナナミだしね?」
あの後、ナユをおぶったままナナミは坑道を抜けた。だが外に出ても、そこはすでにゾンビでいっぱいになっていた。
ナナミはナユをギュッとおんぶしなおすと、大丈夫だと、絶対守るから、と意識のないナユに話しかけながら駆け抜けた。
しばらく走ると息がきれてきた。だが立ち止る訳にいかない。
襲ってくるゾンビ達が幸い動きが遅い為なんとか今までは無傷でこれたが・・・ふと油断した時、背後から来ていたゾンビに対する反応が遅れた。
だめ・・・ナナミは必死になって避けようとした。
「大丈夫?」
その時追いついたリオが棍の一撃でそのゾンビを倒し、ナナミに声をかけた。
「リ・・・オ、さんっ。」
ナナミは息を切らしながらリオを見た。
「僕が背負うよ。」
周りにいたゾンビを一掃した後でリオが言った。ナナミはナユをリオに渡した。
そしてまたそのまま街の出口を目指した。
とりあえず無事街を出た後、その足でクロムという街を目指し、今に至る。
リオがふと気付いたように言った。
「どうやら・・・目覚めたようだね?」
「え!?本当?本当?」
ナナミは慌ててベッドに横たわっているナユを見た。
ナユはぼんやりした様子でうっすらと目を開けている。
「ナユ!!良かった・・・良かったよーっ。」
「・・・ナ・・・ナ、ミ・・・?」
「2日も、寝込んだままだったんだからーっ。」
「こ・・・こは?」
「ティントの南、クロムの村。」
「リ・・・オ・・・」
まだぼんやりしているナユは、クロムだと言ったリオを名前で呼んだ。
なぜかそれでニッコリとしているリオを見たナナミはこっそり涙を拭くと、リオに言った。
「ナユ、気がついたし、ホッとしたから、あたしちょっと休憩、してきますね。リオさん、ナユ、頼みます。」
そしてニッコリ笑ってから部屋を出ていった。
ナユはまだぼんやりとしたままである。その様子を、ナナミが座っていた椅子に座り、リオはじっと見つめた。
多分・・・ネクロードとやりあった時に、そうとう紋章の力を使ったのであろう。
「・・・出来れば・・・使わせたくは、なかった・・・」
ぼそりとつぶやく。
声がまた聞こえたのか、ナユがゆっくりとリオを見た。
「・・・あ、なたは・・・」
「やあ、起きた?」
リオがニッコリと言うと、ナユはガバっと起き上がった。
「こっここはっ?ティントは?ナナミは!?皆はっ」
「まあ、落ち着きなよ?さっきも聞いてたのにね?ここはクロムの村だよ。ティントは・・・ゾンビ達によって落ちた。ナナミは当然無事だよ、ていうか貴様をここまで運んだのはナナミだから。皆も無事なようだね、多分。」
「そ、そうですか、よ、良かった・・・。あなたはいったいどこに・・・?」
とりあえずホッとした様子のナユはリオを見た。
「僕?ちょっとね、あのミューズのバカが何かしてたからね、ちょっと本拠地まで行ってテッドとカイリを引っ張ってきてた。その後助けに出ていたクラウスやリドリー達は僕が逃がしたし、今ちょっと行方が分からないあのミューズのバカどもも多分無事だよ。テッドとカイリがついてるだろうから。僕的には別にどうだって良かったけどね。」
「そ、そうだったんですか・・・ありがとうございます。」
「貴様に礼を言われるとなんか気持ち悪い。」
「なっ」
「まあ、どうせなら態度で示して欲しいね?」
「た、態度って?」
するとリオはニッコリとして左手の人差し指を自分の唇にあてた。
「ば、バカな事言わないで下さい、それどころじゃない。と、とりあえず僕は様子を見にいきます。」
猫耳をピコピコと動かしながら言う様子に、クッと笑いながらリオは言った。
「貴様は面白いんだか面白みがないんだか。ああ、ナナミ、多分その辺にいるだろうから元気な様子、見せてあげるといいよ。ずっと貴様についていたから。」
「そ、そうですか・・・。」