神に誓って愛します
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、泉の体に引っ付けていた顔を引き離して泉に向き合い、泉の瞳を覗き込むように見つめながらゆっくりと名前を呼ぶ。
「いずみ」
「なに」
「いずみ」
「おー」
何度も、何度もくりかえし名を呼ぶ私に文句も言わず、いつもの彼からはなかなか聞けないようなそんな優しい声音で相槌を打つ泉に、改めて抱きしめる腕へと力を入れる。
言葉だけでなく、あふれ出そうなこの思いも伝わればいいのに。
そう思い、強く抱きしめた。私の背に添えられた泉の手があやすように背中を撫でて、彼の優しさがそこからじんわりと伝わってくる。
「いずみ」
「ん」
「あいしてる」
ズッと鼻を鳴らすもようやく言葉にできた自分の気持ちに、またぼろりとひとつ涙を零した。
知ってるっていう言葉が降ってきて、更に涙があふれ出る。喉の奥からヒュッとかヒッとか音が漏れ、嗚咽が漏れそうになるのを堪えるため慌てて俯くもどうしても肩が強く震えた。
私が零した涙が泉のシャツを濡らしていて、きっと冷たくて気持ち悪いに違いないだろうに、泉は私を突き放すことなくこの姿勢を保ってくれている。このままの体勢でいたらきっともっと沢山、泉のシャツを濡らしてしまうだろう。それでも私は泉の側から離れることはできなくて、ただこの優しい腕の中ですすり泣く。
世の中の常識だとか、世間体だとか、色々あるのは知ってるけれど。
愛してるって言葉がどれだけ深い意味があるかって事も知ってるけれど。
今はただ、素直に。
「私もさ」
「おー」
「泉をさ」
「おー」
「神に誓って愛するよ」
俯いていた頭を持ち上げると、こちらを見ていた泉と視線がぶつかる。
泉の柔らかい笑みに私も笑みを返すとゆっくり瞼を閉じ、そして啄ばむ様な口付けを交わした。