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神に誓って愛します

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「そう思って頑張ってきたんだけど、私、それ程器用じゃなかったみたい」
 力なく声をたてて笑う。抑えたような声で私の名を呼ぶ泉にできるだけ柔らかい笑みを向け、肩を竦めてみせる。
「こんなにさ、みっともない事ばっかり見せて…しかも、嫌われてもおかしくない事してるのにさ」
「……」
 視線を泉からはずすとまた空へと仰ぎ、小さいけれど空いっぱいに広がる星を眺めた。一歩を踏み出す力をください、そう星へ願い言葉を紡ぐ。
 
「私、泉と別れたくない」
「…遠野」
「でも、もし泉が別れたいのならわた」
「遠野!」
 話の途中に強い声音で名を呼ばれ私はビクッと肩を震わした。こっち見ろという言葉に怖々と泉へと向き直ると、背もたれから体を起こしこちらを強い眼差しで射抜くように見られ、私はここから逃げ出したい気持ちに駆られる。
 
「オレがいつ別れるっつった?」
 
 真剣な眼差しで、一音一音しっかりと紡がれた言葉。名前を呼ぼうと口を開きかけたと同時に泉の言葉が重ねられる。
「オレも遠野と別れる気ねえから」
「泉…」
「だいたい、様子がおかしいとは思ってたけど、なんでそんなトコまですっ飛んでんだ」
 泉の顔に苦笑交じりの笑みが浮かんだ。私は眉間に皴を寄せ唇をかみ締める。そんな事言われたって、別れないとだめなのかなって、思ったんだから仕方がないじゃない。そう思ったのが表情に出たのか、泉は一つため息を吐き出すと、ペットボトルの蓋をあけゴクゴクと喉を鳴らした。ぷは、という声と共にこちらへと差し出されるボトルを受け取り同じように口をつける。シュワという炭酸らしさを味わっているとぽつり、と泉が呟いた。
「お前に甘えてたんだろうな」
「……私に?」
「そ、遠野に」
 一体いつ甘えられたのだろうか、サッパリ想像がつかない。ペットボトルを返しながら首を傾げる私に、泉は笑いながらペットボトルを受け取ると一気に呷り飲み干した。キャップを閉めて無造作にゴミ箱へと放り投げると、こちらを見てもう一度笑う。
「お前が何もいわねえし、ダイジョーブだろなんて思ってさ。そーいうのって甘えだろ?」
「あっ、でも、私!私が悪いんだ、よ…平気な振り、してたから」
「……そーいや、田島が言ってたっけ」
「田島君?」
 そういえば、彼も色々とお世話になった気がする。正直なところ、私にとってはありがた迷惑だったようなそんな感じだったが。いいきっかけだったな、と思えるようにはなっている…大概現金だな、私も。ふるふると首を振って、泉の言葉の続きを待つ。すると彼は一度不思議そうにこちらを見た後、言葉を続けた。
「遠野がそろそろ壊れるぜ…ってさ。まー、浜田とかにも色々言われてようやく気づいたんだけど」
「…浜田君も」
「そ、かっこわりーだろ?まー、なんつーか…自惚れてたっつーか」
 泉は自分の頭を緩く掻き毟ると、大きなため息を一つ零した。がっくりと両膝に腕をついて前屈みの体勢になると、顔だけこちらへと向けて苦笑いを零す。
 
「遠野が連絡無しで休んだの、正直けっこー堪えた」
「ゴメン」
「お前が悪ィんじゃねーだろ。あー、でもま、お互い様か」
「うん、でもゴメン」
「もー謝んな」
「うん…」
 申し訳なさで俯いてしまう。地面をきつく見つめながら、ここ数日の自分を振り返る。あの泣きはらした数日がなければ、きっと今の自分はなかっただろうとは思うのだが、それでも泉を心配させたのは確かなのだ。
「はー、仕方ねえか」
 不意に隣から聞こえた声に少し驚いて頭を持ち上げると、泉へと視線を向ける。同じように頭を持ち上げていた泉がベンチから立ち上がるのを視線で追う。
「まだ話してえ事はあんだけど、流石にそろそろ帰んねーとやばいからな」
 軽く伸びをしてそういうと彼は私に向かって手を差し出してきた。私は小さく頷いて、差し出された手へと自分の手を重ねると、力強く引き上げられる。
「ありがと」
「おー。送ってく」
 手を握られたまま泉がとめた自転車まで一緒に並んで歩いた。たった数歩だったが繋いだ手はとても暖かく、心地よかった。自転車の前まで来ると一度強く手を握られてから繋いだ手が離れる。なんだか心が騒いで、ジュースを買って帰ると言って自販機へと踵を返してしまった。
 ポケットの財布から硬貨を取り出すと、少し迷って先程泉から貰ったジュースのボタンを押す。今日だけはよしとしておこう、そう思って小さく笑った。
「ねえ、泉」
 少し屈んで自販機から出てきたペットボトルを取り出しつつ泉に声をかける。すぐ様相槌が打たれて、私は体を起こしながら問いを投げた。
 
「泉は、私の事好き?」
「あ?いきなりどうした」
「そういえば聞いてなかったと思って」
 別れる気は無いと聞いて嬉しかった。でも、泉の気持ちを聞いていないことに気づいたから。思わず問いを投げかけた。このまま聞かずに帰ってもよかったのかもしれない、でもまた同じことを繰り返しそうで。そう思い私は自販機のほうを向いたまま泉の答えを待つ。
「…今更だろ、ったく」
 嘆息交じりに呟かれた言葉、咳払いの声の後短く望んでいた言葉が紡がれた。
 
「好きだよ」
 
 心臓の音が高鳴った。泉の言葉が心へと沁み、じんわりと眦が熱くなる。震えそうになる声を堪えながら、続けて私は問いを投げかける。
「神に誓って?」
「神に誓って」
 すかさず返ってきた同意。振り向いて泉へと視線をむけると向こうもこちらを見ていたのか、直ぐに二人の視線はぶつかり絡み合う。大きな瞳の中に映る自分に、何故か涙がこぼれそうで。瞬きを数度繰り返してから再び彼に問いかける。
「愛してくれるの?」
「おー、愛してやるよ」
 打てば響くかのように即答された言葉。口調はどこかぞんざいな感じに取れるが、こちらに向ける瞳はとても柔らかくて。堪えていたのに、眦に浮かんだ雫がぼろりと頬を伝う。
 
 
ああ、こんなにも言葉が欲しかったのか。
 
 
 止め処もなく流れる涙を見られるのがとても恥ずかしくて、すっと空を仰ぎ見た。一面に広がる星の海はとても優しい光をしている。きっと今まで見たどの星空よりも綺麗なんだろうな。
 じんわりと滲んだ空を見上げながら右手で目頭を擦る。
いつまでも空を見上げてたらだめだよね。言葉にしてくれた泉にちゃんと言葉で返さないと、私も。
 
「泉」
 
 名を呼んで、ゆっくりと視線を泉へと向ける。目からこぼれる涙の量は幾分か減ったが、それでもまだこぼれ続けている。それでも、今は恥ずかしがらずに真っ直ぐに泉を見つめて。涙でぼやける泉の表情はどこか困ったようなそんな表情で、私は自然と小さく笑った。
 そのお陰かはわからないが泉も少し笑ってくれて、衝動的に彼に駆け寄り何も考えずただ本能のまま彼に抱きついた。
 うわっという声も聞こえたがそれすら気にしている余裕はなくて、ただひたすらにしがみつくかの様に腕に力を入れる。頭上からため息が一つ漏れ、泉が自分の髪を弄る気配がして。そして、ポンと私の頭に大きな手が乗っかるとそのままくしゃりとやや乱暴に頭を撫でられた。
収まりかけていた涙がまたこみ上げてくる。
 
ばか、ホントばか。
 
作品名:神に誓って愛します 作家名:ank