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月がみてる 1・5

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月がみてる 1・5


ぐんと視線が上がった。荷物じゃあるまいし人持ち上げるな。
「おい!」
「優しくしてくれるんだろ?」
ああ、もう。

「部屋温めて食事が先。俺が支度するからあんたは少し寝てろ。」
「つれないな。」
「ほー。こっちも疲れてるんだから途中で寝るかもしれないぞ。」
「寝させないよ。」

「だったら余計食事させろ。ったくそんながっつかなくても。」
「君がいないと眠れない…。」
「いても眠れ無いんじゃ同じじゃないか…。」

業を煮やしたのか太ももから脇から触りだす…。
「ちょっと…!」
強制的に眠らしてやろうかと思うが重くてつれて中に入れそうも無い。

「寒いって…。」
抱えあげられて不安定な状態で抵抗するのも危なっかしい。
怪我させたく無いので碌に抵抗しないのが分かってて素肌に触れてくる。
仕方ない。頭を抱えて耳元に囁く。

「早く中に入ろう。」
下ろしてくれるかと思ったらそのまま抱えて歩く。何て元気なんだ呆れて内心溜息が出る。
そのまま鍵を開けようとした時片手が離れたので肩を突いて膝で押して飛び降りる。

「アムロ。」
手を伸ばしてくる。

すぐ離れて「いいからあなたは火を熾して部屋温めて。車から荷物降ろしてくる。」
内ポケットに手を入れ銃を出して撃つかと思ったが溜息ついて手を出した。

「わたしが持つ。」
俺が逃げないかどうか心配なんだろう。

「じゃ。半分。」手を差し出して
「早くしよう。寒いのは苦手だ。」

手を繋いで歩くなんて久しぶりだな。痛いほど力を入れてる。
寝不足の所為でより情緒不安定になってるようだ。一服持ってでも眠らせたいところだが。
どうせ大人しく寝ないだろう。餓え死にはやだぞ。

「優しくない…。」
まあ。確かに。

「おれはひもじいのも寒いのも嫌なの。はい。持って。」

恨めしそうに見る。もう一つを持って手を引っ張ってロッジに入る。

「火を熾して。」
と言い捨てて食料品をしまう。
お湯を沸かしながら他の部屋を見て毛布を一枚持ってくると炎を見てボーつとしてる。

インスタントのスープを持っていって
「食事作るから休んでろ。」と言うと

「優しくしてくれるんじゃなかったのか?」
「優しくしてるだろう?食事の支度してるじゃないか。」毛布をかけてやる。

「きみはわたしのこと好きじゃないんだな。」
なに大人気ないことを…。寝不足でかなりおかしい…。

「あのね。俺は嫌いな人間は慇懃無礼に無視する方だよ。知ってると思ってたけど。
あなたを無視したことは無いだろう。」
「でも優ししてくれない。」

おい…。苦笑いして目を隠す。
「良いから寝ろ。」

食事の支度をしながら時々様子を伺うと恨めしそうにじっとこっちを見ながら毛布被ってる。
子供みたいでなんか笑える。本当に少し寝てくれないかな…。


食事作るのに集中してて気がつくと寝てるようだ。目を瞑ってるだけかもしれないけど。
シチューとパンと飲み物。次の分の下拵え。水・薪は十分にあるな。

さて起こすべきか否か。起こさないと撃たれるかも。薪を足して近づくと足元さらわれて転ぶ。

「うわっ。」
即圧し掛かられる。
「やっぱ寝てなかったのか…。」

「少しは寝た。」
20・30分じゃ寝たうちに入らないだろう。がっちり押さえ込まれて重いし背中痛いし。

「折角作ったんだから食事したいんだけど。」
「食べさせてあげよう。」

「よろしく。」
食べられればこのさいなんでも良い。この調子じゃ次何時食べられるか分からない。
いつか殺されて食べられるかもしれないなあ。カニバリズム。不味そう。


腕をつかんで立たせてそのままキッチンに連れてかれる。椅子に座ると手を縛られる。
「おい…。」にっこりして
「さ。」とスプーンをもってくる。…食べますとも。

美味しいと思うのはおなか空きすぎてるからなのか、少しは腕が上がったのか?

「あなたは食べないのか?」
「いただくよ。」縛られた手をふりながら

「じゃ食後の飲み物もよろしく。」
と言っても人に食べさせてばかりいる。自分も食べろ。
ボーっと見られて怖いです。

睡眠とらな過ぎでおかしくなったかな?縛られてる手でスプーンを持ちすくってみる。

「はい。食べて。」
ばくんと食べる。
「どう?」

「ブライト夫人のほうが美味しい…。」
「当たり前だろ。比べる相手が間違ってるぞ。いいな。俺も久しぶりにミライさんの作ってくれたもの食べたかったよ。あなた贅沢だぞ。」

「ブライトに会いたかったんじゃないのか?」
会えば怒られるだろうし。微妙。

「ミライさんや子供たちや他の人の方が会いたいね。」
みんな元気にしてるかな。

「ここからでたらすぐ帰るから誰にも会えないぞ。」
「生きててくれれば何時か会えるだろう。それで十分だよ。もう少し食べたら?」

「わたしには食事や睡眠よりきみが必要だ。」
「…なんか食べ物の一種になったような気がするんだよなあ。何時か殺して食べる気なんじゃないの?」

「まさか、生きていれば何度でも味わえるのに。」
「やっぱ食べものじゃんか…。」

「食べても食べても無くならない。」
「そう思うならがっつくな。」
「今のわたしは飢えているんだ。」

何時もじゃないのか?言うと煩いからオフレコ。
何故そんなに飢えるのかな?満たされないと言うことは俺も悪いんだろうな。
すべてとは言わないが。言いませんとも。

「アムロ…。わたしに食べさせてくれるんだろう。きみを…。」
「嫌と言っても聞かないんだろ…」
縛られたままの手を差し出す。

「俺はここにいるんだから。あなたのそばに。」
飽きるまでね。

「今心の中で付け足した部分は無しにしてもらいたいな。」
なんでばれたかな…。
「目が優しくない。」あ。そう?

「それは気をつけるよ。でも俺はもともと優しくないからな。」
「わたしには優しくしてくれるんだろう。」
「そうしたいけど。」

手をとって抱きしめる。
「わたしを満たしてくれ。」
…期待しすぎだろ。抱きかかえて毛布の上に横たわされる。

「手このままだと服脱げないぞ。」
「後で解くよ。きみが正気をなくしたらな…。」

そうくるか。やつの頭の後ろに繋がれた手を回して強引に顔を近づけ軽く口づける。
そのまま徐々にキスが深くなり体の熱を煽るように指が蠢く。

「う…ん」熱い…。下着を脱がすの間も惜しむかのように後ろに触れてくる。
手を縛られてると一方的に与えられる刺激に体が反応するだけで気持ちが置き去りになるようなもどかしさが抜けない。

慣れた体はどんどん熱くなりもどかしさを押し流してしまう。
前をはだけさせて胸をついばんでいるやつの髪をひっぱって
「脱がせて…熱い…。」
暫く動かなくなったと思ったら嫌そうに手を解いてくれる。汗だくで風邪ひいちまう。

「半端に着てるぐらいならさっさと脱いじゃいたいんだけど。」
脱がしてくれながら
「色気が無い…。」

また面倒なことを。色気ねえ…。期待する方が間違ってると思う。
「手を縛られてるとあなたに触れられないから気がそがれるし。」

「抱きついてくれれば良いだろ。」
つまんないこと言うなあ。がっつきすぎか。
作品名:月がみてる 1・5 作家名:ぼの