a hose and a queen
26.4?の王国
「困ったヤツだな、俺の王様は」
「なんだ、王様って。どういう意味だ」
床に脱ぎ落としたスラックスを隣でのたのた穿き直す山本の向かい、リボーンは黒目がちの猫目をくるりとさせて言った。
起き抜けに自分で言った事柄の大きさに、相手が受ける印象など基本的に気に留めないが、山本が言うにしては嫌味が混じっているように思えたのだ。
「んー?ちょっと、待ってな」
スラックスを腰まで引き上げ、テーブルの上にへばりつくように掛かっていたシャツを着て、ベルトを締める。そうしてネクタイを締め始めてようやく続きを口にする。
「王様って一番偉いんだろ?だからボンゴレの王様はツナ。で、ここと」
山本は両手の人差し指で立っている床を指し、次いで自分の胸を指した。
「ここの王様はおまえ」
「小っちぇー国だな」
リボーンはまた両目をくるりとさせると、もそもそとベッドに潜り込んだ。山本はスーツのジャケットに袖を通しながら、参ったか、と笑った。
部屋のドアを開けて、山本は少しベッドを振り返った。
自分の体で作り出したシーツの影、その中でリボーンがちょっとだけ顔を出してこちらを見ていた。
「死ぬなよ」
小さい、しかしはっきりとした声だった。
「死なないよ、王様」
答えが返ってくることはない。
「ここには、俺とおまえしかいないんだから」
2008.7頃
作品名:a hose and a queen 作家名:gen