【黒の皇子 黒の神子】(中編小説/未完)
だからこそ【ゼロ】が現れたときに、彼女は何もかもを悟ることが出来たのだ。彼らの悲しくて愚かな計画の全てを。
勿論そんなことは、この頭の固い従兄には教えてはやらないけれど。
そんなことを考えながら、彼女は優しくその腹に触れた。
ルルーシュとの子供がこの腹に宿ったと知ったとき、彼女は本当に嬉しくて泣いた。これで、ルルーシュとの間に自分だけの絆を得られたという、浅ましい優越感すら感じた。
けれどそれくらい構わないだろう。そう彼女は思う。
これは彼女の最後の我が儘なのだから。
この子供は、国と共に生きることを義務付けられた皇の神子としてではなく、神楽耶個人としての願いの結晶だった。
そう、愚かなほどに浅ましい願い。
あのとき、彼の弱さにつけこんだ神楽耶と、それを受け入れたルルーシュ。
彼女はそれを思い出しながら、そっと微笑んだ。
作品名:【黒の皇子 黒の神子】(中編小説/未完) 作家名:からくり