【完全読み切り】夓
「で、どう思う?」
「で、って言われましても…」
コウキくんは直球でぶつけてきた。
「それはユウキ先輩がもっと積極的になるべきでしょう」
「やっぱり…?」
「大体女の子に全部投げるようなのって最悪じゃあないですか」
「分かってるけど…」
「…ユウキ先輩」
「なに?」
「正直、男ってもっと強引な生物ですよ」
「そうか…そうだね」
彼に感謝をして電話を切る。
どうしようかな。明日はハナダの岬に行こうって言ってたし。
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彼が、私の手を引く。いつぞやの光景だろう。
…でも、なんか緊張するっていう感じがしない。
というか、うれしい。
そして、彼が岬の、ちょうどいい景色が見えるところに来ると、いきなり私の背中に右手をのばす。そのまま脇を通して、ギュッと引き寄せられる。
これが彼に求めていたことなのかな。たとえ違っていたとしても、これを求めていたことにしておきたい。
彼の顔を見ていると、もう迷いがないんだもの。