Memories of CGf
#14 「五勇者伝説再び」
クラーとの闘いの後、手に入れたのは一つの古文書だった。
乱雑に綴じられていて、うっかりすると頁が破れてしまいそうだった。
古いものであることには間違いはなさそうだが、その割には傷みが少ないようにも見える。
もっとも、詳しいことはわからない。
そっと頁をめくってみる。
てっきり古文書というからすごい文字でが書かれているのかと思ったが、そうでもないらしい。少し見慣れない文字も混ざっているものの、読めないほどではない。ただ文体は難解で、何が書いてあるかを読み取るのは難しかった。何か自然や気候の記録のようなものらしいというところまでは分かるが、それ以上のことになるとさっぱりだった。
メイファ「ねえー、用が済んだんなら早く帰ろうよー」
退屈そうにメイファが不満の声をあげる。
僕は古文書をそっと閉じた。
裏表紙に署名がある。おそらく著者の名前だろう。
それは、ウィリス、と読めた。
メイファ「ちょっと、聞いてるの?! 早く帰ろうっていってんの!!」
メイファが不機嫌なのも無理はない。
手に入ったのはこの古文書だけで、お宝らしいお宝はなにもなかったのだ。
イハはまだクラーをしめあげているが、どうやら期待はできなさそうだ。
アベル「わかったわかった。こんなとこさっさと出よう
……イーハー!!」
喚こうが叩こうが一向に介さないクラーにしびれを切らして
頭にかじりついていたイハを引きずって、僕等は外に出た。
* * *
ウェル「やあ、おかえり。早かったね。どうだった?」
入り口ではにこやかな笑みを浮かべたウェルが待っていた。
アベル「見つかったのはこれだけだ」
そういって、古文書を渡す。
ウェル「あれ、他にはなかったのか。残念だなあ。
……どれどれ、中は何が書いてあるのかな?」
ウェルは目をキラキラさせて文書をパラパラとめくる。
本当に歴史の研究できればそれでいいのだろう。
お宝がみつからなかったことなどどうでもいいらしい。
こっちはまったく骨折り損だったのに、全然気にしている様子はない。
あんまり無邪気スギテ、かえって嫌味がないから、怒る気にもなれない。
まあ、メイファにしてもイハにしてもあまり気にしているようにも見えないから
まあいいのかもしれないが。
そんなことを一人でブツブツ考えていると
急にウェルが大声を出して飛び上がった。
本当にぴょぉんと飛び上がったので
何の冗談かと思ったらどうやら驚いているらしい。
ウェル「これは、これは……すごい発見だよ!
と、と、とにかくはこれをすぐに城に持っていかなきゃならない。
君らもすぐ来てくれ、そこで色々説明できると思う」
そういうなり、ウェルはビックリするような早さでいなくなってしまった。
アベル「城だって?」
* * *
リセリア城の一室
ウェルに呼ばれてきた旨を告げると
兵士が現れてこの部屋に案内された。
扉には部屋の主を示すものはなにもない。
兵士「ご案内致しました」
男の声「ご苦労だった。中へご案内せよ」
兵士が扉を開き中に入る。
そこはいささか薄暗い部屋で、装飾はほとんどなく、
壁一面に埋め尽くされた本棚には様々な書物が隙間なく収められている。
何かの研究をする部屋のようだ。
奥には人影が二つ。
ひとりはウェルだ。
もう一人にも見覚えがある
ゲイツ「おお、そなたであったか勇者候補。私は王宮召喚術師長のゲイツだ。まみえるのは幾月ぶりだな。彼の話を聞いてもしやと思ったが、この度の発見はとても目覚ましいものだったぞ!」
メイファ「……あたし、あいつにこの世界に連れてこられたのよね」
メイファがボソリという。
ああ、そうか。
こいつに喚ばれてきたんだっけ。
ゲイツ卿はこちらの様子にかまわず
興奮した口調で話を続けている。
この古文書はよほどの発見だったのだろう。
しかしようようと話しつづけるゲイツ卿をみていると
どんどん気分が覚めてきて、彼の話すことが全て
遠い出来事のようにしか感じられなかった。
ぼんやりと聞いた話をまとめると
古文書はどうも日記のようなもので
書いたのは五勇者の一人、ウィリスであるらしい。
しかし重要なのはそこではなかった
ゲイツ「実はこの日記は、十数年前まで記録が続いているのだ。
もしかすると五勇者は……
生きているかもしれん」
作品名:Memories of CGf 作家名:イハティーサ