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みとなんこ@紺
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ハミングバード

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2.






ぶんぶん、と元気よく手を振りながら駈けてきた遊戯と、パン、と軽く手を打ち合わせる。
「今日は早いじゃねーか、気合入ってんな~」
返ってきたのは予想通り、にぱ、と音でも付きそうな全開の笑顔。
「だってすっごい楽しみだったからね!城之内くんこそ早かったねー、今日は絶対一番だって思ってたのに」
「へっへー、楽しみにしてたのは別にお前らだけじゃなんだぜ!」
Tシャツにジーパン、といつもの彼のお決まりでラフなスタイルだが、今日は色の薄い丸型のサングラスが鼻先に引っ掛かっている。
城之内はにっと悪戯っぽく笑って、内緒話でもするように遊戯の耳元に口を寄せた。

「なんか妙に浮かれちまってさ、実は昨日ほとんど寝てねェの」
「ボクもだよ」
「朝なんて目覚ましより早く楽勝で目ェ覚めちまったし」
「そうそう」
「じっとしてらんないよな」
「夏だもんね!」

以上、結論。
二人で単純に決着をつけて、遊戯はよいしょ、と重そうなカバンを城之内のスポルティングバックの隣に下ろして、バス停のベンチに腰掛けた。


「今日も暑くなりそうだね」


空を見上げて呟いた遊戯の声が不意に遠くなる。

割りこんでくるのは漸く鳴きだしたセミの声だ。


ああ、そうか


つられたように、空を仰いで、ちょっと笑ってしまった。

「夏、なんだなぁ・・・」

見上げた空はつきぬける様に青い。
雲の白、空の青。
単純に言うとそれだけなのに、なんだろう。目に染みるようなコントラストに心が動かされるような・・・こんな時なんて言うんだろう、普通。
ぼんやり空を見上げる、なんてここしばらく何かに追われてそんな余裕もなかったからだ、きっと。

夏特有の熱さも、
空の色が特別なのも、
少しの間、忘れてた。

セミの音が遠くなる。
代わりに、耳に届いたのは



ピピピピ・・・・ゴトン



――――ん?

耳馴染みのありすぎる電子音の方へ振り向いたのと同時、心の底まで切り込まれそうな深い赤と目が合った。
「おはよう。城之内くんも何か飲むかい?」
僅かに目を伏せて少し屈んで取り出した缶ジュースを手に、もう一度視線を合わせると彼にしては緩く笑う。もう一人の遊戯のお出ましだ。
遊戯につられてか、常より何となく浮ついているような気がする。まぁあまり感情を表情に出さない彼だから、浮かれた自分の目にはそう映るだけかもしれないが。
「んじゃ、オレも…」


ぱららぱっぱぱー♪


「ん?」
『わ』
「を?」
何か買おうかなと城之内が返すよりも早く、自販機から賑やかな電子音が流れだした。
「おおー?」
「どうしたんだ?」
『当たりだよ、もう一人のボク!やったー!』
「当たり?」
『この自動販売機、ルーレットになってて…ほらここに当てたらもう一本貰えるんだよ!』
「へぇ…」
そうか、と1人冷静なもう一人の遊戯を置いておいて、遊戯も城之内も「さっすが、ついてんなー!」と大喜びだ。
ルーレット、ねぇ。
まぁ、何か回っているなとは思ったが、ただし選ぶ時自体、自販機の方を見てはいなかったから…確かにそういう意味では運が良かったのだろうが。
もう一人の遊戯は尚も喜んでいる良いテンションの2人へ向けて、僅かに首を傾げて呟いた。
「…だけど、こういうのは寧ろ城之内くんの方が得意なんじゃないか?」






「ゴメン! 遅くなっ…」
――――た?
「よー、御伽。仕事場からお疲れさん」
・・・うん。おはよう本田くん。
ていうかそれは良いんだけど。
「どうしたんだい、あれ」
ちょい、と背後を指で示すのを、あえてそちらの方は見ないようにしながら、本田はひょいと肩を竦めてみせた。
「何かハマっちまったそーだ」
そこに過分に呆れが混じっているのは気のせいではないと思う。
「・・・やっべーなー、コツ分かったら簡単じゃん」
6本目の当たりを取り出しながら呟く城之内の声は、流石に戸惑ったようなものになっていた。どうしよう。遊戯に言われてお試し、で挑戦したはいいものの、まさかここまで当たるとは。
「まぁ確率の問題だからな・・・」
『でもここまで当たっちゃうのはすごいよねー…』
「城之内くんのルーレット運て本物なんだねー」
呑気な事を言いながらあははと笑う獏良の横で、御伽は本田からスライドされてきた、まだ冷えている戦利品のペットボトルを手に、小さく笑った。




作品名:ハミングバード 作家名:みとなんこ@紺