無限ループ
「…………っ、いざ…や…!!」
「あはは!流石のシズちゃんでも、頸動脈を切るとハデに出血するねぇ」
だから俺は、一日の終わりにシズちゃんを殺そうとする。
どんなに俺を愛したシズちゃんでも、どんなに俺を憎んだシズちゃんでも関係ない。
俺を置いていこうとするのが、悪いんだ。
身体ばかり頑丈なシズちゃんが死んだ事は一度も無い。ああ、この言葉は矛盾しているか。シズちゃんが死ねばこのループは終わるはずなんだ。幸せで、虚しくて、最悪なこのループが。
殺せないならば、シズちゃんの前から俺が消えればいいのかもしれない。
けれど、彼に同じように接する誰かが居たら?こうして彼を独占する時間を自分以外の人間に与える程、俺は寛大ではない。シズちゃんがシズちゃんである限り、彼は彼の物で、その彼が自分が何者かを分からないというならば、彼について完璧に答えられる俺が、彼の持ち主であるべきなんだ。
「……臨也…なん、で…臨也」
今日は、俺を愛したシズちゃんは悲しそうな目で俺を見る。
可哀想だね、シズちゃん。
俺に愛されたばっかりに。
「――――泣く、な。バカ…
抱きしめられた温もりが、早く消えればいいと思っていて。
それでいて、いつまでも触れて居たいとも願っている。
「おやすみ、シズちゃん」
不公平で、最悪で、それでいて幸せなループ。
俺達が抜け出せるのは、いつになる?
傷口を丁寧に消毒して、真っ白な包帯をくるくると巻きつける。
血が飛んだシーツを新しくして、俺よりも大きい身体を横たえさせた。
胸に耳を当てれば、静かに聞こえてくる呼吸音。
よかった。これで、明日もシズちゃんに会える。シズちゃんの居る世界で、俺も生きていける。
ほら、また今日も
「おはよう、シズちゃん」
「…アンタ、誰だ?」
世界は残酷。
だからこそ、俺は生きている。
無限ループ/end