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Love is by nature blind

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毎回毎回、いい加減にしてくれよ。

 目の前に広がる光景に頭を抱えたくなった。君何してるんだい。
 冷ややかな視線の先には白目を向き、両手に酒瓶を持った半裸の元兄弟が全裸の隣国と何やら口汚く罵 り合っているところだった。この人は凝りもせず毎度毎度…。何を話してるのかと耳を傾けてみるとどちらが酒に強いか、という最高にどうでもいい話題だった。ほんとにこのオッサンたちはどうしようもないな。

「おー!アメリカじゃねぇか!なんだどうした、おまえも飲みたいのか?ははっ、残念だがこれは俺の酒だから例えおまえでもやるわけにはいかねぇなぁ!」
「頼まれたっていらないよ、そんな理性をログアウトさせるような物体。それより君、また飲んだのかい?」
「そうなんだよこれさぁ日本のえだまめっつー食べ物らしんだけど、プロイセンのバカから奪って食べてみたらすっげぇうめーんだ、おまえも食べてみろよ!」
「…君、一体どれだけ飲んだんだい?」
「あ?スペインの野郎の好きな食べ物?そんなもん知るかばかぁ!ロマーノに聞けばいいだろ!」
「そんなこと聞いてないし、知る必要もないし知りたくもないんだぞ。君、人の話し聞いてる?」
「聞いてるに決まってんだろ!フランスの野郎のことだろ!?フランスのくそったれはどこ行きやがった、まさかあいつ、逃げやがったのか!?」

  全く話が噛み合ってないし何を言いたいのかも不明だしよく分からない。もう、ほんと…どうしような、この人。水とかぶっかけたら酔いも醒めるかな。元のバカなイギリスに戻ってくれるかな。後でぎゃあぎゃあ文句は言われるだろうけど、説教くらいいくらでも聞いてやるさ。スルーするけど。水、水…と視線を迷わせていると、ふらふらした足取りでイギリスが何処かへ立ち去ろうとしたので、慌てて彼の細い腕を掴んで引き止めた。つん、と引き止められたイギリスは不服そうにこちらを見た。

「ちょ、何処に行くんだい」
「どこって、決まってんだろ、フランスぼこりに行くんだよ」

 あいつ、喧嘩売るだけ売って逃げやがった。喧嘩を売られた以上、買うのが英国紳士の務めだ!なんて高らかに意味不明な主張を宣言するイギリスの腕をもう一度強く引っ張って意識を此方に向けさせた。フランスフランスってさっきから君やかましいんだそ。

「さっきから何しやがんだ、離せ!」
「嫌だよ!離したら君、フランスのところに行っちゃうんだろ?許さないんだからな!」
「別にお前に許して貰わなくても結構だ!なんだよ、お前もしかしてフランスの肩持つつもりか!?畜生あのワイン野郎っ…!俺のアメリカをたらし込みやがって、今日という今日はフルボッコにしてやらぁ!」
「俺のアメリカって君ねぇ…!ああもう、ほら、こっち来て!!」
「何しやがるテメェ!離せって言ってんだろうがぁああ!」
「ちょっと暴れないでくれよ!」

 ぎゃあぎゃあ喚き倒すイギリスの腕を掴み、部屋の隅の方まで彼を引っ張ってきて椅子に無理矢理座らせた。それでも彼はぶつぶつぶつぶつ呪いのような言葉を吐き続けていて、どうにか落ち着かせようと、とりあえずビールを与えてみると眉根を思いきり顰めつつも大人しくなった。全く…ほんとどうしようもないな!
 うめーうめーと騒ぎながらビールをガブ飲みするイギリスを眺めながら、昔はこんな人じゃなかったんだけどなぁ…と普段なら絶対に考えもしないことだが、今の彼を見ているとどうしても昔のイギリスが頭をよぎって仕方が無い。昔はかっこ良くて優しくて大きな人だと思ってたから、今のイギリスとのギャップに昔は俺もイギリスのこと盲目的に見てたんだよなぁ、と本人には口が裂けても言えないような事実がぽんぽん頭に浮かんでくる。今は絶対に言ってやらないけど、もしかしたらこの先彼に告げることが出来る日が来るかもしれない。…来ない確立の方が高いけど。
 (こんなに小さくて頼りなくて口が悪くて皮肉屋のひねくれ者で酒癖が悪くて眉毛で…あ、眉毛は昔からか)
 それでも俺はこの人がいいなんて。俺も大概おかしいよなぁ…。苦笑いをこぼしてイギリスを眺めていると美味しそうにビールを飲んでいた彼が突如動きを止めて手で口を覆い始めた。え、まさか吐きそうとか?こんなところで吐かれでもしたら後々やっかいになる。プライドの高い人だから公共の場でリバースしたとか、しかもそれを俺に見られたとかそんなことになったりしたら、地の果てまで落ち込んで面倒臭いことになる。そうなる前にとにかくトイレに運ぼうと彼の腕を掴んだそのタイミングで、くしゅんっと彼が盛大にくしゃみをした。
 その時になって、そういえば彼は半裸だったな、と改めて気付いた。ずっと思ってたんだけど、なんで服脱ぐの?
 辺りを見渡しても彼の服がどこにあるか見当たらない、どうせ飲んでわけが分からなくなってそのまま脱いだんだろうけど。普段紳士紳士と豪語してるくせにやることが変態って何なんだろう。ともかく寒そうにしてる彼をこのままにはしておけない。

「… 着て。寒いんだろ?」
「あ?さ、寒くねぇに決まってんだろ!いらねぇよばか!おまえが着てろ!」

 差し出したフライトジャケットを突っ返された。空調の効いてるこの部屋で寒くないわけないだろ、服着てる自分がちょうどくらいなんだから。よく見るとイギリスの肌に若干ぷつぷつと鳥肌がたってるのが見える。…またつまらない意地張って…。

「君、今の自分の格好分かってる?半裸だよ、は ん ら!みっともないんだぞ!ほら、早く着なよ!」
「ぶわっ!?ちょ、おい、やめろって!俺はいいから、お前着てろ!こんな寒ぃんだ、暖かくしておかないと風邪引くだろ!?」
「……その言葉、そっくりそのまま君にお返しするよ。ていうかやっぱり寒いんじゃないか!つべこべ言わずにさっさと着なよ!ったく…!」
「ばかっ、いらねぇって言ってんだろ!!」
「それじゃあ俺が困るんだよ!!」

 そもそも半裸って事態が許せないんだよ!誰もそんな貧相な体見たくないだろうけど、万が一ってこともあるかもしれないじゃないか、そんなの許せないんだぞ!
 無理矢理ジャケットを羽織らせ、それでも脱ごうと無駄な抵抗をしてくるイギリスに、ジャケットのファスナーを首元まで一気にあげてやった。酔って手元が覚束ないイギリスはファスナーを下ろそうともたついている。

「な、何しやがんだこのばかぁ!」
「これで君も寒くないし、ちょうどいいじゃないか!大人しく着てなよ!」
「………」
「……?イギリス?」

 急にイギリスが黙り込んだ。どこを眺めているのか、ボーっとして心ここにあらず、といった感じで俺の服に埋もれている。頬も赤い、酔いが回ってきて眠いのだろうか?

「イギリス、眠いの?なら早く帰ろうよ」
「……する……」
「ん?何か言ったかい?」
「この服、アメリカの匂いがする…」

 今なんて言った、この人。
作品名:Love is by nature blind 作家名:こはる