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Get your GOD off

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チェス盤を前に、彼は次の手を考えあぐねていた。果たしてどんな手を打てばこの状況は逆転できるだろうか、と、助けを求めて手元のルールブックを見る。駒の動かし方を懇切丁寧に書いてあるこの本は、悲しきかな、基礎にページを割きすぎて実戦についてはなんの戦略ものっていない。
(ルールは頭に入っている。本番にも、強いはずなんだけど)
 元来頭を使う作業は苦手だった。頭で考えるよりずっと早く、反射的に体は動く。彼がそういった質であることを知っているはずの幼馴染を見れば、彼は少し離れた席で我関せずと本を読んでいた。
「スザク、そろそろ時間だぜ」
「うん、わかってる」
 無情にも時計の針は刻一刻と進んでいた。対戦相手は既に目前の勝利に頬を緩めている。眉を寄せて数秒盤上を睨み、諦めて枢木スザクは一つ息を吐いた。
「ルルーシュ」
 名を呼べば黒髪の青年は椅子にもたれたまま本からちらりと顔を上げた。緩慢な仕草でスザクの顔を、そしてチェスボードを見て、吐息のように微かな笑みを漏らす。
「こてんぱん、だな」
「そうそう、いくらルルーシュでもこの状況から逆転はできないでしょ」
「そうでもない」
 ルルーシュは猫のように音もなく体を起こして二人に近付き、細い指を無造作に伸ばして黒のクイーンをとった。
「最後まで大事に守ってるからリヴァルなんかにやられるんだよ」
「なんかってな――え?」
 声を遮り、こん、と駒の下ろされた位置を見て、抗議の声は驚きに変わった。
「あと八手でチェックメイト」
 どうする、と問うようにルルーシュは横目でクラスメイトを見る。そして大慌てで次の手を考えるリヴァルを置いて、スザクの隣へ腰を下ろした。
「流石だね」
「まあ、これくらいしか能がないからな」
 詰まらなそうな顔をしてルルーシュは再び本を広げる。スザクがしばらくその白い面を見つめていると、顔を上げずに彼は問うた。
「ところで、どうして急にチェスなんか覚えようとしてるんだ?」
 リヴァルが盤と睨み合い此方に注意を払っていないことを確かめて、低く続ける。
「昔は俺が散々言っても駒の動き一つ覚えなかっただろ」
「そうだったかな」
「ああ」
 薄紫の瞳にじっと見つめられ答えを促され、彼の時折見せる頑固さは自分の主人とよく似ている、とスザクは場違いなことを思った。そんなことは口が避けても声には出せない。
「ユーフェミア様の命なんだ。騎士になったのならチェスくらいはできてしかるべきだと」
「そうか。……そうだな」
 ユーフェミアの名にわずかな動揺をおし隠して、主人の異母兄にあたる青年は静かに瞳を伏せた。憂いを醸すその表情に何か声をかけようと口を開けば、タイミングよくリヴァルが駒を動かした。
「これでどーよ?」
 駒が盤を叩く小さな音に、瞬時に彼はいつも通りの顔になり、腕を伸ばして迷いのない手付きで次の手を打つ。
「まだ甘いな。あと七手だ」
 抗議の声を上げるリヴァルに構わず、ルルーシュは再び読んでいた本を開く。その変わり身の早さにタイミングを逸し、スザクは用意した言葉をただ飲み込んだ。

作品名:Get your GOD off 作家名:名村圭