君の大事なメロディ
わっと逃げ惑う群集の中で、挑発的なニヤケ顔を見せつけ、ちょこまかと逃げる臨也に向かって、標識を振り上げる。
その時、
あの声を聞いた。
魂を鷲掴みにするような清冽な声。
抑えきれない愛とどうにもならない悲しみを訴える甘い歌。
哀愁と慈愛、安らぎに満ちた旋律。
それが見事に溶け合い、輝くばかりの一つの感動となって、聞く者を魅了する。
からんと、音をたてて、標識が手から滑り落ちる。
それと同時に、歌は終わった。
歓喜に打ち震える身体を無理やり動かし、あの声の発信源に目を向けると、そこには先程まで談笑していた少年がいた。
途端、その場にざわめきが戻る。
……今のって……伝説の……嘘だろ……そういや、ダラーズのメンバー……嘘、男だったのかよ……うわ、俺超ラッキー……友達に連絡……じゃあ、ダラーズのリーダーって……あのガキが……写メ取ろーぜ……
はっと、現状に気づき、身を翻そうとした帝人に向かって腕を伸ばす。
「えっ、静雄さ」
「やっと見つけた」
万感の思いを込めて抱きしめた。小さな身体を全身で包み込む。すぐ近くで聞こえる鼓動が加速して、たまらない気持ちになった。ここに、ようやく。ようやく、捕まえた。もう会えないと思っていたのに。ここにいる。腕の中に。
「ずっと、会いたかったんだ」
それを見て、さらにどよめきが増す。
……おい、平和島静雄が……あの喧嘩人形が……信じられねえ……やべ、携帯向けんな、殺されっぞ……
それを聞いて帝人の顔が血の気をなくしているのも知らずに、静雄は腕の中にいる憧れの存在の温かさを噛み締めていた。
そして勿論、それをにやにやしながら眺めている天敵の視線も、射殺しそうな眼差しで見つめる少年の存在にも気づかないまま。
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ちなみに無駄設定ですが、作曲は杏里で、歌詞を書いたのは正臣。歌に関しては適当。
8巻読んでたら、帝人くんへの愛が爆発した。とりあえず帝人くんが幸せになればいいよというわけで、パロに逃げました。池袋の真ん中で帝人くんを抱きしめたい。