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銀魂/ログまとめ/万事屋

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【8月12日】



 洗濯物、神楽のパジャマを畳んでいるときだった。
「新八さー」
「はい?」
「明日はこなくていいから」
「はい?」
 読んでいたジャンプを乱暴に放って、銀時は鼻をほじくりながらそういった。
「明日は休みにしてやるっつうの。お前、明日誕生日じゃん」
「あ…ああ、そうでしたね。明日12日かぁ。いや、いいですよ。明日は燃えるゴミの日だし、来ますよ」
「いいから。誕生日くらい仕事休みたいだろ、普通」
「え、でも」
「いいからいいから。仕事もねぇし、明日はゆっくりしろって。妙とでも仲良く過ごせや」
「あ……はい。じゃあ…ゆっくりさせてもらいます」
 太陽が西に傾き、東から夜の気配がしてきた午後6時過ぎ。新八は道を歩きながら、昨日の銀時との会話を思い出していた。ほんの少し、胸がせつなく痛む。
 昨夜はめずらしく夜更かしして、今日の朝は随分遅くに起きた。顔を洗うための洗面所で会った姉に誕生日おめでとうと笑顔で言われ、ありがとうと笑顔で返したが、どこか言いのようない複雑に気持ちになった。そのまま一日予定もなく、お通ちゃんのCDを聞いたり雑誌を読んだりぐだぐだしていたら、いつのまにかこんな時間である。
 今日は姉も休みを取ってくれて、お祝いしましょうと夕食を作ってくれるらしい。しかし、作り始めて5分もしないうちに、あれがないこれが足りないと言い始め、新八が買い物にいくことになり、今こうして味噌と卵とネギの入った袋をさげて帰路を歩いているのである。
 同じような家が並ぶこの道には、どこからともなく家庭のにおいが漂っていた。一番強いのはカレーだった。街灯だけの薄暗い道から家のを明かりを見上げながら新八は歩いた。
 どうして銀時は休みなどくれたのだろう。祝ってもらえることを当たり前に考えていたわけではないが、祝いの言葉ぐらいもらえると思っていた。
「あ、新八くん」
 はっとして新八は顔を上げた。紙袋を抱えた長谷川が笑顔でこちらに向かってくる。
「やー、偶然だなぁ。あ、今そこのパチンコで大勝ちしてね。いやー久しぶりに、本当に久しぶりに荷物が増えたよ」
「良かったですねぇ」
 新八は紙袋からはみ出た菓子を見ながら笑う。
「そう言えばさ、今日新八くん誕生日なんだろ? たいしたもんじゃないけど、これあげるよ」
「え」
 長谷川は紙袋からクッキーの箱を取り出して差し出した。長谷川が知っていることに驚きながら、新八は呆然とクッキーを受け取る。
「銀さんが昨日言ってたんだ。昨日そこで隣になってさ」
 パチンコ屋を指差しながら言う。
「あ、えっと、なんかすみません。ありがとうございます」
 懐があたたかくなったことの喜びからだろう、長谷川は誕生日おめでとうと、わははと笑いながら新八の肩をたたき去っていった。
 長方形のクッキー箱をビニール袋にしまって、新八は再び歩き出す。少し落ち込んでいた気持ちが浮上して、頬に笑みが浮かんだ。いつかお返しをするべきだろうか、長谷川の誕生日はいつだろうと考えていると、再び正面から歩いてくる人に声をかけられた。
「よう」
 この暑い中でも隊服を着込んだ土方だった。
「今日誕生日らしいじゃねぇか」
 予想もしていなかった言葉が二度続き、新八はぽかんと口を開けた。
「チャイナから聞いた」
「え、神楽ちゃん?」
 どういう経緯で神楽から聞いたのか気になったが、土方が「この先で総悟見なかったか」と聞いて話がそれた。
「や、見なかったですけど」
 新八がそういうと、土方は仕方がないという顔をして、会ったらすぐに戻れと伝えてくれと言った。会うこともないだろうと思いつつも、新八はうなずくと、それじゃと足を進める。
 それを再び呼び止められて、土方はマヨネーズ型のライターを渡してきた。
「やる」
 新八が受け取ると、土方はそう一言いうと去っていった。その背中とライターを交互に見ながら、新八はライターの使い道がないことをぼんやり考えた。
 少し迷って、ライターを袂にいれ、新八は再び歩き出す。土方に誕生日祝いをもらうなど、思ってもいないことだった。その驚きに喜び、新八はなんだか笑い出したくなるのを抑えて家路を急いだ。
 背の低い通用門をギギギと音を立てながらくぐった。鼻歌を歌いながら、閂をかける。
 万事屋で祝ってもらえなかったのは残念だったけれど、それは銀時たちが自分を気遣ってくれたことで、一日の休暇が銀時のプレゼントなのだと新八は悟った。
 実は、門に着くまでにも、近所のおばさん数人に偶然会って、採りたてのトマトときゅうりをもらった。一まとめに入れたビニール袋は少し重い。それでも、思いがけない人たちからの贈り物が嬉しくて、新八はビール袋を回転させながら玄関に向かった。
 トマトはそのままで食べようかと考えながら玄関扉を笑顔で開けた瞬間、パーンと何発もの爆発音が新八を迎えた。驚きすぎた新八はしりもちをつく。どっと沸く笑い声。
 妙、近藤、沖田、神楽、銀時の馬鹿笑いと笑顔がそこにあった。


Happy birthday 新八!!









作品名:銀魂/ログまとめ/万事屋 作家名:ume