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銀新/雪祭り、その夜/銀魂

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 コンビニをでると再び冷たい空気に身が縮こまる。白い息をついて新八と並んで歩き出す。
「ん? 新八、お前、なに持ってんの?」
 新八が胸元に丸く赤いものを抱いている。
「あ、ここに肉まん入ってるんです。フリースでできた袋なんで少しは保温できるんですよ。神楽ちゃんがこれ持ってけって。温かいですよ」
「……ふーん。あ、じゃ、こっちがプリンとかか。じゃあ、こっち俺が持つわ」
「あ、すいません」
 新八が白いビニール袋を差し出す。受け取りながら、銀時はハッとした。
 ビニール袋を受け取り、素早くもう片方の手に持ち返ると、銀時は袖の中に戻りそうな新八の手を掴んだ。
「え?」
 驚いて新八の足が止まる。つられて銀時も止まった。
「手、繋いでいこうや。あの、寒いし…な」
 まっすぐ見つめてくる新八の目を見ていられなくて、銀時は少し先の看板を見つめながら言う。
「あ……はい」
 銀時の気持ちに気づいたのか、新八は恥ずかしそうにうなずいた。
 頬を染める新八と、繋がれた手を見て、銀時は心の中で万歳三唱した。行きの苦労があった分、喜びは大きい。身を切るような寒さが、手を繋げた嬉しさに一瞬にしてどこか行ってしまった。
 新八の手は柔らかかった。指先がとても冷たい。冷えていたはずの銀時の手はすでに熱いほどになっていて、この熱さが少しでも届けばいいと銀時はぎゅうっと新八の手を握る。すると、新八も同じようにぎゅうっと返してきて、銀時はにやける顔を隠すようにうつむいた。
 行きとは打って変わり、二人に会話はなかった。手を繋いで、二人ともうつむき加減に雪道を歩いていく。
 銀時はなんだか落ち着かなくて、何か喋らなくてはと思うが、遅れて沸いてきた緊張に話題を探すも思考がまとまらない。
 胸の鼓動がうるさくて、なんだかもう手を離したくなってくる。けれども、手を離すことを考えると胸がきゅうとして痛んだ。
 顔が火照って耳が熱い。大人の自分が、新八相手にこんな些細なことでこれほどに照れるなんて、もしかしたら病気なのではないかとすら思ってくる。
 はあ、と詰まった息を漏らして体から力が抜けると、新八がくすっと微笑んだ。幸福感に胸がしめつけられる。
 てめぇ、可愛いんだよ。ちくしょう。ああ、だまれ、俺の心臓!
 胸の中で独り言をぶつぶつしていると、とうとう万事屋銀ちゃんの看板が見えてきた。
 もうすぐ着いてしまう。そう思うと淋しさが心の内に広がって、銀時は視線を落とす。
 いつもならもっと近くにあればいいと思うコンビニを、もっと遠くにあればよかったのにと、いつもと真逆のことを考える。
 玄関へと続く階段の前についてしまった。二人は立ち止まり二階の家を見上げる。
 手を離さなくてはと銀時はぼんやり思った。離さなくてはと思うほど、離しがたくてたまらない。
 重いため息を漏らして、銀時が手を離そうとしたとき、
「……なんか、離しがたいですね…」
 新八が恥ずかしそうに顔を赤らめて銀時を見上げた。
 とろけるように新八が微笑むのを見ると、震えるほど胸が苦しくなる。いてもたってもいられず、階段の下に引っ張り込んだ。
「わ、銀さん」
 乱暴に抱き寄せると新八の驚いた声がした。
 自分を見返してくる瞳を見つめて、銀時は新八の頬に触れる。
「…新八……」
 銀時の囁きに新八の体が緊張する。
「わりぃ…キスさせて」
 銀時の熱のこもった声に、新八の瞳が揺れた。
 新八の返事もきかず、銀時は新八の唇にふれた。
 柔らかい新八のそれに銀時はとろけそうになって、新八を強く抱き寄せた。自分の着物を握りしめてくる新八が愛しくてたまらない。
 角度を変えて深く口付けすると、新八の背中が震えたのがわかった。
 時折漏れる新八の吐息が、銀時の熱を燃え上がらせる。
 ちゅ、と水音をさせて唇が離れても、抱き合った体は離さなかった。
 力が抜けた新八が自分の肩に顔を乗せて息を整えるのを、銀時は満足した心地で聞いていた。
 早く戻らなくては神楽が怒る。そうわかっていても、二人はしばらく離れることができなかった。








 和室の襖を開けると、神楽はコタツで横になり肘枕でテレビを見ていた。寒い外気を伴って入ってきた二人に渋い顔をしながら遅いと口を尖らせる。
「あれ? 新八も銀ちゃんも顔真っ赤ネ。外暑かったアルカ?」
 二人は驚いて顔を見合わせ、さらに真っ赤になってうつむいてしまう。
「…あーあー。なんだ、そういうことカヨ。ったく、食べる前からこちそーさまアル」
「かっ、神楽ちゃん!」
作品名:銀新/雪祭り、その夜/銀魂 作家名:ume