銀新◆吾輩は狛神である◆銀魂
吾輩は狛神である。名前は定春。
龍脈が噴出す場所、龍穴を守護する高貴な存在である。ただの犬と一緒にしてもらっては困る。
江戸最大の龍穴、黄龍門を守護するのを生業としていたが、天人なる下賎な者が黄龍門にターミナルという巨大な塔を建ててしまった。神聖なる龍穴の力を船の転送に使用するとは、なんと愚かなことか。
吾輩はそんな天人を抑えられない阿呆な幕府に日々憤慨していたのだが、さらに我慢ならない仕打ちを幕府は行った。今まで龍穴を護ることで吾輩の世話をする巫女に金が入っていたのだが、護る穴がないことで給金が入らなくなってしまったのだ。
狛神の吾輩にはよくわからぬことだが、金というものは生活するために大変必要なものらしい。はじめ、巫女たちの金がないという言葉をそれほど気にせず、ただ龍穴の心配ばかりをしていたのだが、毎日の食事が日々少なくなっていって、ようやく事の重大さに気がついた。量の少なさにむくれていると、ついに飯を与えられなくなったのだ。
二日に一遍という拷問のような扱いに我慢ならず、ある日とうとう巫女に怒りをぶつけると、巫女たちは吾輩を神殿の外に連れ出した。まさか道端の草でも食べろというのではあるまいなと思いつつ、いつもとは違う道を歩いてゆく。情けなくも食い物が落ちていないかと辺りを見回しながら歩き、ずいぶん遠くまで来たなと思ったところで、巫女が小汚い箱を指さした。
中に入れというので仕方なく入ってやる。すると、ここで人を待つように言われた。これでもう大丈夫だとか、優しい人たちよ、などと言われ、吾輩が何のことやらと考えているうちに当人たちは走り去ってしまった。
今思えば、何故あの時、変に思わなかったのか自分の愚かさに頭をかかえるばかりである。吾輩は待てと言われたことを素直に聞き入れ、大人しく座っていたのだが、道ゆく人々の吾輩を見る目が哀れさを含んでいることに気づき、ようやく察した。
この吾輩を捨てるだと! と怒り心頭に発して、今からでも巫女を追いかけて噛み付いてやろうかと思ったが、すぐに改めた。あんな飯も出せないところにいても仕方がない。吾輩は形はでかいが犬よりも断然可愛らしいし、すぐに新たな人間が現れるだろうと考えたからだ。
しかしながら、このかぶき町という汚い街ではそんな審美眼を持つ者は少ない様で、寄ってくる者はなかなか現れなかった。
とかく寒いし、腹が減ったしで、不安になり始めたころ、小便臭い子供たちが吾輩を囲んだ。
このガキ共ときたら可笑しいったらなかった。吾輩を触りたいのに、怖がって手を出せずにいるのだ。しかし、怖がっているのを友人に気づかれたくなくて虚勢をはる。
こういう見栄を張る行為は子供だけでなく、人間全体にみられる行為のようだ。
誰が始めに触るかと言い合っているので、小さくワンと吠えてやると、みんな恐怖に引きつった顔をしたまま固まってしまう。これにはおかしくて我慢できずに笑ってしまった。
しばらく子供たちはそこにいたが、ガヤガヤとうるさいので放っておくと、一人の子供を残して走っていった。そして、その少女は吾輩を見つけると、怯えることもなく目を輝かせたのだった。
これが、吾輩が万事屋銀ちゃんという奇妙な仲間の一員になったきっかけである。
龍脈が噴出す場所、龍穴を守護する高貴な存在である。ただの犬と一緒にしてもらっては困る。
江戸最大の龍穴、黄龍門を守護するのを生業としていたが、天人なる下賎な者が黄龍門にターミナルという巨大な塔を建ててしまった。神聖なる龍穴の力を船の転送に使用するとは、なんと愚かなことか。
吾輩はそんな天人を抑えられない阿呆な幕府に日々憤慨していたのだが、さらに我慢ならない仕打ちを幕府は行った。今まで龍穴を護ることで吾輩の世話をする巫女に金が入っていたのだが、護る穴がないことで給金が入らなくなってしまったのだ。
狛神の吾輩にはよくわからぬことだが、金というものは生活するために大変必要なものらしい。はじめ、巫女たちの金がないという言葉をそれほど気にせず、ただ龍穴の心配ばかりをしていたのだが、毎日の食事が日々少なくなっていって、ようやく事の重大さに気がついた。量の少なさにむくれていると、ついに飯を与えられなくなったのだ。
二日に一遍という拷問のような扱いに我慢ならず、ある日とうとう巫女に怒りをぶつけると、巫女たちは吾輩を神殿の外に連れ出した。まさか道端の草でも食べろというのではあるまいなと思いつつ、いつもとは違う道を歩いてゆく。情けなくも食い物が落ちていないかと辺りを見回しながら歩き、ずいぶん遠くまで来たなと思ったところで、巫女が小汚い箱を指さした。
中に入れというので仕方なく入ってやる。すると、ここで人を待つように言われた。これでもう大丈夫だとか、優しい人たちよ、などと言われ、吾輩が何のことやらと考えているうちに当人たちは走り去ってしまった。
今思えば、何故あの時、変に思わなかったのか自分の愚かさに頭をかかえるばかりである。吾輩は待てと言われたことを素直に聞き入れ、大人しく座っていたのだが、道ゆく人々の吾輩を見る目が哀れさを含んでいることに気づき、ようやく察した。
この吾輩を捨てるだと! と怒り心頭に発して、今からでも巫女を追いかけて噛み付いてやろうかと思ったが、すぐに改めた。あんな飯も出せないところにいても仕方がない。吾輩は形はでかいが犬よりも断然可愛らしいし、すぐに新たな人間が現れるだろうと考えたからだ。
しかしながら、このかぶき町という汚い街ではそんな審美眼を持つ者は少ない様で、寄ってくる者はなかなか現れなかった。
とかく寒いし、腹が減ったしで、不安になり始めたころ、小便臭い子供たちが吾輩を囲んだ。
このガキ共ときたら可笑しいったらなかった。吾輩を触りたいのに、怖がって手を出せずにいるのだ。しかし、怖がっているのを友人に気づかれたくなくて虚勢をはる。
こういう見栄を張る行為は子供だけでなく、人間全体にみられる行為のようだ。
誰が始めに触るかと言い合っているので、小さくワンと吠えてやると、みんな恐怖に引きつった顔をしたまま固まってしまう。これにはおかしくて我慢できずに笑ってしまった。
しばらく子供たちはそこにいたが、ガヤガヤとうるさいので放っておくと、一人の子供を残して走っていった。そして、その少女は吾輩を見つけると、怯えることもなく目を輝かせたのだった。
これが、吾輩が万事屋銀ちゃんという奇妙な仲間の一員になったきっかけである。
作品名:銀新◆吾輩は狛神である◆銀魂 作家名:ume