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銀新/気まずい二人乗り/銀魂

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 真っ赤な夕日が見えた。
 左手の大きなターミナルタワーは、逆光のせいで黒い柱のようだった。








「じゃ、お昼ご飯は定春と食べてね。毎日続いて悪いけど……今日も」
「豆パンダロ」
「うん……あ、冷凍庫に」
「バナナ、ネ。豆パンと冷凍バナナ……昨日も、一昨日もアル」
「しゃーねーだろうが。この前の依頼料は全部お登勢が持ってっちまったんだからよ。それにオメーの治療代だって高ぇんだよ」
「骨折は不慮の事故ネ! 銀ちゃんには人をいたわるって気持ちがないアルか! 骨にはカルシウムネ! 豆パンじゃカルシウムがとれねぇんだよォォ!」
「だったら定春のカリカリでも食っとけや! マルチビタミン配合だぞコラ」
 お互いの胸先をつかみ合ってグルルと睨み合う銀時と神楽を横目に、新八はため息をつきながら玄関を開ける。玄関でケンカをされては近所迷惑だ。
「ほら、銀さん。遅れないようにもう出ましょうよ。神楽ちゃん、今日の依頼料で酢昆布買ってくるから」
「ホントか! 酢昆布、10箱買ってくるアルか!」
 胸先の銀時の手を払って、神楽が笑顔を見せる。
「なーにのぼせたこと言ってんだよ。2個だ、2個」
 手をひらひらとさせながら、神楽を残して銀時も玄関を出る。
「2ダースアルか! 銀ちゃん太っ腹ネ!」
「バカ、2箱だっつーの」
「神楽ちゃん、出かけるときはちゃんと鍵かけてね。日が暮れる頃には帰ってこれると思うから」
 ぶつぶつ文句を言う銀時を押しのけて、新八は玄関の引き戸を閉める。
 気をつけて酢昆布買ってこいヨ〜と白いギブスの右手を振る神楽に見送られて、新八と銀時は階段をおりた。
 柳生九兵衛との一件が終わり、無事近藤の婚礼も破談となり、万事屋にいつもの日常が戻っていた。
 相変わらず、依頼があっても出費が多い。せっかく依頼料が入っても、家賃滞納と大食漢が二人のせいで、このところの食事は安売りの豆パンと先日の披露宴でもらってきたバナナばかりであった。
 さて、本日の依頼である。依頼主は遠州屋という深川の料亭からだった。そこの庭の草取りが今日の仕事であった。庭といってもただの庭ではなく、枯山水の奥にある苔むした山の部分の草取りで、どうやら一日がかりの仕事になりそうだった。
 一日がかりといっても、料亭が開店する夕方5時前には仕事を終わらせなくてはならないが、およそ6時間の仕事となれば万事屋の淋しい懐も一気にあたたまるだろう。何しろ、この依頼は柳生の一件の発端になった、屋根の修理をした料亭からの紹介だった。ここから発展して、次の仕事に繋がることを新八も銀時も期待していた。
 銀時の後ろに乗った新八は冷たい外気に首をすくめる。外を歩くにはちょうどいい季節になってきたが、風を切るバイクに乗るとまだ寒く感じる。新八は前の男の背中に身を隠すように顔をうずめた。
 かぶき町から深川まではしんじゅく通りを江戸城に向かい、八丁堀を抜けて大川にかかる橋を渡る。川の向こうへ行くのは久しぶりだと、新八は昔、深川の祭に父と行ったことを思い出す。帰り道、同じように帰る参拝客の流れにそって大川の橋を渡りながら、花火を見た思い出があった。
 銀時の運転するバイクが赤信号で橋の上で止まる。車が走る振動で橋が大きく揺れているのが原付のシートから伝わってきた。
 大川には何本かの橋がかかっているが、あの時の橋はこの橋だっただろうかと思い出そうとするが、記憶は遠すぎて見えてこない。
「やっぱ、水の上だからちょっと寒ぃな」
 前の銀時が話しかけてくるのにはっとして、そうですねと応える。
 川の水面に冷やされた風が肌を撫でては過ぎていく。
「あ…銀さん、鳥飛んでますよ。なんだろ…あ、あそこで餌あげてるんですかね」
 橋の中央のあたりに半円形の広場があり、柵に寄りかかってってはしゃいでいる男女がいた。そのほかにもベンチに座って川の流れを眺めている老人などがいる。
「水面がキラキラしてんな」
 広場は両側にあったが、太陽が水面に反射してきらめくのがよく見える片方側だけに人が集まっていた。
「キレイですねー。今日は暖かいし散歩日和なんじゃないですか。ここからの夕日も良さそうですね。帰りもここ通りますよね」
「時間が合えば、帰りあっち側に寄ってみっか」
 銀時が向こうの広場をあごで指して言った。そうですねと応えると同時にバイクが走り出す。気を抜いていたせいで後ろに倒れそうになるのを銀時にしがみついて逃れた。