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トマトな小生意気 ~ファーストキス編~

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「なぁプロイセン」
 ロマーノは、最近ちょくちょく俺の家に顔を出すようになっている。
 と言っても、せっかくなら街中を案内してやろうかと切りだしても別にいいと返され、何かベルリンに用事でもあるのかと聞いても特にないと答える始末だ。相変わらず扱いの難しいガキだぜ。
 スペインにくっ付いてウィーン辺りに出るまではそう難しい事じゃないだろうが、そこからベルリンはまた少し距離がある。それがわざわざここまで出向いてくるんだから、割と懐かれているのかも知れない。
 生意気だが案外可愛い性格だと分かっているし、何よりイタリアちゃんとそっくりの顔だ、悪い気はしねぇ。
 てめぇは好きにしてろと客とは思えない命令口調で言ってきたロマーノに免じて、俺はソファに腰掛けた。もう知るかめんどくせぇ。
 ロマーノの突然の訪問で中断されていたが、テーブルの上に戻してしまった報告書を手に取るともう一度読み始める。するとロマーノが隣に腰掛けてきた。このソファが一番座り心地がいいし、好きにしたらいい。と思っていたら、ロマーノがころりと横になる。
 そんで現状の体勢だ。ソファに座って書類を読んでいる俺様と、俺様の膝を枕代わりに横になっているロマーノ。この体勢を変だと思わない人懐っこさはイタリアちゃんと似てる。嫌いじゃない。顔を俺の腹側に向けているせいで、頭のくるんがこっち側に向けて飛び跳ねているのに妙に心をくすぐられた。

「どうした、ロマーノちゃん。眠くなったなら寝てもいいぜ」
「そんなんじゃねぇよ」

 ロマーノの頭を撫でてやろうとすると、ぺしと弾かれた。なんだ、素直に甘やかされろよ。重いのを我慢してやってるんだから、頭くらいなでなでさせやがれ。
「可愛くねぇ」
「別にてめぇに可愛いと思って貰おうなんて思ってねぇよ」
 なんつー生意気なガキだ。俺様の膝枕で寝てる奴のセリフかこれ。堂々と俺様のソファの上で足を延ばして、ロマーノはぐいと俺のシャツを引っ張った。だからなんだよ。
「話があるんだ、もうちょっとこっち来いよ」
 力いっぱい引っ張られてぐいとロマーノの顔が近づく。生地が伸びるだろ、少しは遠慮しろよ。もっと近くに来いと要求されてるらしいが、生憎と俺様の体はそんなに柔らかくない。
「これ以上行けねーよ」
 背筋がいてぇ。無理だとさっさと諦めて体勢を直すと、ロマーノがちっと舌打ちした。仕方ねぇなと起き上がる。ようやく姿勢を正すのか、と思ったらロマーノは俺様の膝の上に座りやがった。離れる気はねぇのか。頭だけより重くなってやがる。
 俺の足をまたぐようにしてロマーノがこっちを向く。不機嫌そうな面近づけられてもどうしろっていうんだ。好きにしろと言ってたくせに、そんなてめぇのセリフは忘れたらしく報告書を勝手に横から奪うとテーブルの上に戻された。別に急ぎの用じゃ無いから構わないが、バラバラにしたり汚したりはすんなよ。こいつならやりそうでこええ。

「プロイセン」

 そして俺が向き合っていた書類の代わりに、ロマーノが何かを怒っているような顔を寄せてくる。名前を呼んできた声がいつもよりちょっと低い。そうやってまともな声を出すと普段より二割増しくらい男前だ。
 別にロマーノごときに怒られた所で怖くはねぇが、何を怒っているのかには興味がある。どんな事に怒ってどんな事に笑うのか。そんな事を知ったからって何になるんだとも思うが。無駄に怒られずに済むくらいか。
 ロマーノは間近でじっと俺を見つめたままだ。俺様がいくらカッコいいからって、そんなに見つめられるとさすがに照れるぜ。
 あぁこうしてじっくり見るとやっぱりイタリアちゃんとあんまり似てねぇな。イタリアちゃんが可愛いならロマーノの方はカッコいいって分類だろう。怒ってばっかりいなければ、ロマーノも素材は悪くないはずだ。俺様の方が数倍カッコいいけどな。
 ロマーノの手が俺の肩に置かれた。鼻同士がくっつくくらい間近に顔が寄ってくる。俺様を見つめたいにしても、さすがにこれは近過ぎるだろロマーノ。


「俺のファーストキスやるから責任とれよ、プロイセン」


 ……は?
 ロマーノが残りの距離を一気に詰めてきた。詰めてくるどころじぇねぇ、ゼロだ。
 唇になんか温かいものが押しつけられる。一体ロマーノは何をしてるんだ。何って決まってるだろ、これはあれだ、キスというやつだ。俺とロマーノが?
「!?」
 言葉が出ねぇ。何か反応したほうがいいはずだ。なんだ、俺はどうすればいいんだ。頭が真っ白になったみてぇにまともな事が何も浮かんでこない。ロマーノちゃんの唇やわらけぇとか俺なんてあちこちで喧嘩してるわ碌な食事もしてねぇわでガサガサなのにとか他人の体温ってやっぱあったけぇなとかしょーもねぇ事ばっかりだ。つーか心の準備くらいさせろよ!
「分かったな」
 ほんのちょっとだけ離れると、ロマーノが確認するようにそう言ってきた。何の話だ。責任取れだと。何言ってやがるこのマセガキ。完全に無理やりじゃねぇか。

「ふざけんな、ファーストキスなのがてめぇだけだと思うなよ!!」
「お前もかよ!?」

 クソ、墓穴掘った気がするが気にしてられるか。確かにロマーノは嫌いじゃねぇ。正直言ってお気に入りだ。けどこういう事をしてくる野郎だとは思ってもいなかった。このイタリア男が、色気づいてんじゃねぇよ。100年はええんだよ!!
 生意気な顔で笑ったロマーノを睨みつけてやる。なのに普段ならこれだけで怯むはずのロマーノに全く効かねぇ。くそ、俺様はご立腹なんだ。クソガキの顔を正面から見れねぇなんてそんなはずはないぜ!

「なんで先に言わねぇんだよ、そうだと知ってたらもっと味わってやったのにちくしょー!!」
「言えるか! だいたいてめぇも初めてだろうが!!」
 
 プロイセンのあほんだら! と聞き捨てならない文句を吐きながら俺の膝の上でロマーノが悔しげにじたばたと暴れる。暴れたいのはこっちだ。どうしろっつーんだ。だいたい責任ってどうやって取るんだよ、結婚か、結婚なのか、俺様にロマーノと結婚しろってか。普通に考えてムリだろ。ハプスブルグに喧嘩売れって事じゃねぇか。
「おい、危ねぇ!」
 安定しない所で暴れたせいでロマーノがぐらりと体を揺らした。ここから落ちたらソファから床までそれなりに距離がある。頭から床に激突しそうになったロマーノの腕を慌てて掴んで俺の方へ引き寄せた。

「…………死ぬかと思った」
「これくらいで死ぬかよ」

 あぁマジで世話のかかる奴だな。引き寄せた勢いでロマーノと体がぴったりくっついてしまっている。というかロマーノが怯えて体を寄せてきているというか。仕方ないねぇなとロマーノの背に手を回してやる。
「あのさ、ロマーノちゃん」
「なんだよ」
 ずっとこいつを側に置いておくのは、悪くないんじゃないかと思う。が、したいしたくないとできるできないは別だ。慕ってくれるのは悪くない、むしろすげぇ嬉しい。けどロマーノのためにも先にきちんと言っておかないと。
「結婚はちょっと難しいと思うぜ」