末裔
「お二人ともご苦労様!」
ヴィンセントとルクレツィアは声のした方を振り返った。
「エアリス!」
ヴィンセントは驚いた。
「あなたは・・・さっきの・・・この人に助けてもらったのよ、あなた」
ルクレツィアは彼に成り行きを説明した。
「助けただなんてとんでもないわ、私はほんのちょっとお手伝いしただけよ。ヴィンセントを助けたのはあなたよ。ルクレツィアさん!」
エアリスは愛嬌のある笑顔を振りまいた。
「あ、そうだそうだ、君もよく頑張ったね」
彼女はヴィンセントの足にしがみついているセフィロスをじっと見つめた。
セフィロスは泣き出しそうな瞳で彼女を見つめ返す。
「なんて顔してるのよ、セフィ君!今度は立派な男の子になるんだぞ、わかったかい?」
彼女はセフィロスに向かってにっこり微笑んだ。
それに応えてセフィロスも笑った。
「その調子!」
「エアリス、ありがとう」
ヴィンセントが話しかけた。
「礼を言うのはこちらの方よ、ちょっと油断している隙に魔界の封印がこんなに弱くなってたなんて・・・それにあなたにカオスが憑いていたなんて・・・もっと早く気付けば良かったんだけどね。後は私たちに任せて。ここの封印をもう一度しっかりやり直さなくちゃね」
「エアリス・・・」
「気にしないで、これは私たちセトラの仕事なのよ。でもこうして世界を見守っているのも結構楽しいのよ。それにいつかまた地上に戻れる日が来るかもしれないしね。さ、あなたたちも送ってあげるわ。どこに住んでいるの?」
「ミディールだ」
「へえ、すぐそこだね、ちょろいちょろい、じゃあ行くわよ」
「ありがとう、エアリスさん」
「またな、エアリス」
エアリスはにっこり微笑んでヴィンセント達に手をかざした。
「お幸せにね!お二人さんプラスワン!」
彼女の声が響き、三人の周りの景色が一瞬で流れた。
気が付くと三人は見慣れた草原に佇んでいた。
「帰ってきたのよね、あなた・・」
「ああ・・」
「なんだか、夢みたいな出来事だったわ」
「そうだな」
ルクレツィアはセフィロスを見つめた。
「ねえ、この子も魔族の血を引いてるのよね。あなたみたいに悪魔に狙われたりするのかしら・・」
「セフィロスは大丈夫だ。私を闇から引き戻してくれたくらいだからな・・・」
「そうよね、それにもし悪魔につけねらわれた時には・・・私たちで守ってあげればいい!絶対ジェノバの二の舞にはさせないからねっ」
「そういうことだ」
「さ、おいで、セフィロス」
ルクレツィアはセフィロスを抱こうとした。
セフィロスは嫌がってヴィンセントの方へ行こうとする。
「まあ、あなたの所の方がいいって」
「よし、セフィロス」
彼はセフィロスを抱き上げ、肩に乗せた。
セフィロスは大喜びで手足をばたつかせた。
「さあ、家に帰ろう」
彼らは歩き出した。
風でたなびく草原の向こうを野生のチョコボの群が駆けていった。
「チョコボ!」
セフィロスが目を輝かせて叫んでいる。
「セフィロス、また一緒にチョコボに乗ろうな」
ヴィンセントの穏やかな瞳がセフィロスに語りかけた。
「いいわね、セフィロス」
ルクレツィアはセフィロスの頬をつついた。
「うん!チョコボ!チョコボ!」
セフィロスはヴィンセントの肩の上で大はしゃぎしていた。
傾いた太陽が彼らの影を草原に長く長く伸ばしている。
ミディールは今日もうららかなうちに日が暮れようとしていた。
−終−