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「藤原の好みのタイプはどんな子なんだい?」
「え?」
 ぼんやりと頬杖をついて窓の外を見ていた藤原は、唐突な吹雪の問いかけに気の抜けた声を出してしまった。
「動揺してるみたいだね、当たりかな?」
 ニヤリと笑って吹雪は茶化すように言う。藤原は、いつものやりとりが始まったと知って普段の調子で返した。
「いや、いきなり何を言い出すんだと呆れただけだよ」
「最近ぼーっとしてるみたいだから恋の悩みかと思ってね」
 藤原ははっとして背筋を正した。
 普段はふざけていてそんな素振りは微塵も見せないが、吹雪は鋭い。些細な異変もすぐに気がつく。
 まるで図星だとでも言うような自分の反応に気付いた藤原は、取り繕うように微笑み口を開いた。
「はは、天上院は鋭いのか鈍いのかよくわからないな。少し寝不足なだけだよ」
「ふーん?」
 吹雪は釈然としないとでも言いたげな表情を浮かべるが、すぐに引っ込めていつもの笑顔になった。
 強く印象付けたいからこそ一瞬しか見せない。吹雪がわざとそうしたことが藤原にはわかった。ごまかしきれていないことを悟った。



 デュエルアカデミアに入学してからの日々は忙しく、藤原の胸にわだかまるものはしばらく落ち着いていた。
 デュエル漬けの日々は楽しい。友人もそれなりにできた。教師も個性的で面白い人ばかりだ。
 だが、毎日が楽しいからこそ、眠る前に胸に湧くものがある。
 忘れたくない、忘れられたくない。父も母も自分を置いて逝ってしまった。自分だけが残された。
 オネストはずっとそばにいてくれると言ってくれたが、妖精は大人になったら見えなくなってしまうのが多くの物語の決まり事。自分もいつかオネストが見えなくなるのでは。オネストはいつかいなくなってしまうのでは。
 藤原の不安はどろどろと混ざり合い、蓄積されてゆく。

作品名:azure 作家名:ナオリ