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藤原の様子が変だ、いつもと違う。
そう亮に言ってみたら、「そうなのか?」と首を傾げられた。
どこがどう違うのかと聞かれたら答えられないが、吹雪は最近の友人の態度に違和感を感じていた。
声に元気がない、目の下に隈が出来ている、笑顔が減った。変化がそういうわかりやすいものであれば周囲の賛同を得るのも容易だろうに。吹雪は歯がゆさを感じた。
藤原は今日も夕食と入浴を済ませた後は部屋にこもっている。吹雪の訪問は調べものがあるからと拒まれた。
何を調べているのか聞き出そうとしてみても、デュエルのことだよと返されてはどうしようもない。手伝いの申し出も断られた。他の友人と談笑している時に切り出すわけにもいかない。
そうしてぐずぐずしている間にも、藤原は着々と準備を進めていた。後悔先に立たずという諺をあんな形で思い知るとは思わなかった。
後からなら何とでも言えるものだが、今思えば、無理にでも押しかけてそばにいれば良かったのかもしれない。
穏やかな優等生の心にあんなにも激しい絶望があったことを、写真を撮るのが好きなんだと言って微笑む裏側には寂しさがあったことを、気づいてやれなかった。
僕なんかじゃ彼の不安を埋めるには力不足だったんだろうな、と吹雪は自嘲した。だが、もしあの時に戻れるのならば、彼に伝えたいことがある。
ひよこは殻を破らなければ雛とさえ呼ばれない。孵化しないまま時が過ぎれば、その卵は命にすらなれない。藤原、君もそれと同じだ。忘却に対する不安という殻の中にずっといる。怖がらないで外に出ておいで、と。