【テニプリ】ヒカリノサキ
…幼馴染み…。生まれたときから、跡部はそばにいた。小学校に上がるまでは、誰よりも自分のそばにいて時間を共に過ごした跡部のことは、跡部の両親の都合で疎遠になり、再会を果たす頃にはテニスに夢中になるあまり記憶の奥隅にと消えてしまっていた。再び顔を合わすことになる頃には、あの頃に戻るには時間が経ちすぎて、もう過去のものになってしまったのだと思っていたのに、また、こうして跡部は自分の近くにいる。リョーマとは違う意味で、跡部は自分のそばにいなくてはならない人のひとりになってしまっている。
「…シャツがねぇ…いっか、これで」
上半身は裸でぐしゃぐしゃと頭を拭きながら、出てきた跡部はクロゼットを漁ると、引っ張り出したシャツをその身に羽織った。
「…おい、お前、準備出来たのかよ?」
ふっと視線を向ければ、手塚はブランケットを膝にぼんやりとしている。声を掛けられて手塚は顔を上げた。
「…今、支度する…」
立ち上がった手塚を見やり、跡部は首を傾けた。いつもはやたらと時間に五月蝿い手塚が珍しくぼんやりとしている。
(…大丈夫かよ?)
どこか頼りなげない幼い頃の印象そのままに、しっかりしているようで無頓着な幼馴染みの背中を見つめ、跡部は溜息を吐いた。
作品名:【テニプリ】ヒカリノサキ 作家名:冬故