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【テニプリ】ヒカリノサキ

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閃く光








 8月も半ば…。

 末には全米オープンが控えていたが、それに合わせて調整に入ることも出来ない。全英後からリョーマの中身は空っぽのままだ。意志は伴わず、躰だけが毎日の習慣が抜けずに与えられたメニューを淡々と繰り返す。動いていないと、何もかもが止まってしまう…駄目になってしまう…そんな恐怖に脅えながら、ラケットを握り、ライムイエローのボールを追う。そんなリョーマの姿を見つめ、不二は小さな溜息を吐いてファインダーを下ろした。

「…こんなの、越前じゃないよ」

不二の知るリョーマはどこまでも強気で、どんな強い相手にも物怖じせず、挑んでいく…小気味いいまでに不敵だった。それが、今や見る影もない。

「…抜け殻だな」

カツン。蹴られた小石がフェンスに当たり音を立てる。それに不二は顔を上げた。

「…跡部、」
「よう」

手を軽く上げた跡部は、視線をフェンスの向こうへと向け、眉を寄せる。それを不二は見つめた。
「…メールの通りだな」
「…でしょ。…あんな越前、もう見てたくないよ」
「…ああ。そうだな。こんな有様じゃ、今度こそ、別れ話になりそうだぜ」
壁相手に淡々とボールを打ち続けるリョーマに、跡部は溜息を吐いた。
「…悪いが、持っててくれ」
ダークスーツの上着を脱いで、ネクタイを解き、それを不二に預けた跡部はそのまま、フェンスの扉を開け、コートへと入る。ベンチに立てかけられたラケットを握り、グリップの感触を確かめると、足元に転がったボールを拾い上げた。その久方ぶりの感触に目を細め、跡部はリョーマの背中を睨む。天高く放り上げたボール。ガットに走る衝撃。ボールはリョーマの頬を掠め、壁へと当たり跳ね転がった。

「……?」

突然、頬に走った痛みにようやく闖入者に気づいて、リョーマは顔を上げ、初めて跡部の存在に気づいたのか、目を見開いて跡部を見やる。跡部はラケットを肩に、リョーマを見やった。

「…ったく、情けねぇツラだな。アーン?」