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【テニプリ】ヒカリノサキ

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周りに自分に適う相手などなく、渇えていたときに幼馴染みだった手塚がテニスを始め、それなりにやることを知った。この渇えていた飢えていた心を満たしてくれるのは、この男しかいないと手塚のプレイを目にして思った。そして対戦できる日をどれだけ渇望していたか、手塚は知らないだろう。…あの夏の日…あれは無二唯一、目蓋に躰に焼け付いた記憶だ。あのときの躰を満たす興奮と歓喜は一生忘れることは出来ないだろう。俺は眩しい光の中にいた。手塚と。

「…俺は手塚と試合して、満足しちまった。…色々、悔いは残ったけどな。でもそれは俺の力量が足りなかったってことだ」

赤い夕日にも染まることのない氷蒼の眼差しをリョーマへと向け、跡部はラケットを心臓を射抜くように向けた。

「…それで、……お前は満足してんのか?」

跡部の言葉はリョーマの心を射抜き、拡散していく。
「してねぇだろ。だから、まだ、ラケット握ってんだろーが」
声を漏らして、リョーマは左手を見つめた。
「それに、お前は何か勘違いしてるみたいだが、手塚は別にテニスをやめた訳じゃねぇぜ。まだ、ラケットを握れるうちにプロは止めて、後は自分が打ちたい相手だけとテニスがしたいんだとよ。…その相手ってお前のことじゃねぇの?」
視線を上げ、呆然と自分を見つめるリョーマを一瞥し、跡部はラケットを下ろし、そのラケットをベンチに立てかけ、コートを出る。不二からジャケットを受け取ると小さく溜息を吐いた。
「…ったく、柄じゃねぇってのによ」
「そう?…でも、良かったよ。越前、正気に返ったみたいだしね」
「…じゃなきゃ、困るんだよ。…じゃあな」
跡部はジャケットを肩にコート脇に横付けされた後部座席へと消えた。車が走り去って行くのを見送り、不二は視線をコートへと向けた。

コートのリョーマは目の前が晴れたような清々しい顔をしていた。それにカメラを向け、ファインダーを合わせる。

「…悔しいな。僕でも手塚でも、跡部にしかこの顔にすることは出来なかったんだから」

不二は笑うと、シャッターを押した。フィルムに焼き付いたリョーマは呪縛から解き放たれて、大きな翼を広げていた。