二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

真昼の決闘

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
似た物同士の寄り合いってのは、楽は楽だが,めんどくせえ事も多いなぁ。何でもそうなんだろうけど、全部が全部うまくいくってワケにはいかねえやな。
 そう考え、ホル・ホースは的代わりの空き瓶に向かって新たに一発、『皇帝』を撃ち込んだ。
 陽はさんさんと照っている。悪名高い夏のエジプトの昼下がりだ。どんな観光ガイドも、できることなら避けるように警告している時間帯である。カイロの邸の庭園もご多分に漏れず、焼けるように暑い。
 もちろんホル・ホースにしたところで、好きこのんでこんな時間を選んだわけではない。涼しい夜か、なろう事なら室内で射撃練習をしたいのだが、執事以下住人達から猛烈な横槍がはいったのである。
 今でもその時の嫌味っぽい執事の顔を思い出せる。
『そりゃ、使えない連中ばっかりの所なら真夜中だろうが明け方だろうが構わないでしょうがね、この館では全員が聞えるんです。配慮してください』
かくして、彼は真昼間の庭に追い出されたのだった。
 スタンドである『皇帝』の銃声は、能力のない者には聞えない。だから、これまで練習場所を選ぶなんて事はなかった。人目にさえつかなければいいのだ。
 めんどくせぇなあ。
 もう一発、『皇帝』が火を噴いた。
 とはいうものの、彼にもメリットがないわけではない。今の契約を続けている限り仕事に困ることはないし、この館では能力を使い放題だ。似たような連中が寄り集まって、見せても構わない程度の能力を日常生活に役立てている。ちょっと珍しい経験といえた。
 きれいに手入れされた緑薫る庭園では、植物達がホル・ホースと一緒に灼熱の日差しに耐えている。この暑い国でよくぞここまで、と感心するほど青い芝生の上には彼の並べた空き瓶と、大型のハンドガンを収めた皮ケース。こいつの練習もしたかったのだが、始める前に執事に止められた。実銃の発射音なんぞが聞えたら、今度こそゲリラのアジトと間違われるからだそうだ。
 ああ、暑いな、クソ!
 八つ当たり気味に連射する。何も知らない付近の住民は、静まりかえった庭園のすぐ側で立ち話やら昼寝やら、思い思いにくつろいでいるのだろう。乱雑に並んだ空き瓶がギラギラ太陽を反射して、暑さを倍増させている。
 館の方から、呼ぶ声がした。
「ホル・ホースさーん!」
 また暑苦しいヤツが来やがった。
 振り向きざまに『皇帝』の照準をぴたりと当てても
黄の節制は涼しい顔で、そのままスタスタ近づいて来て、
「うお、すげえ汗!」
と笑った。
「来んなよ、おまえ。暑苦しんだよ」
「じゃ、そうやって執事サンに言ってよ。おれ、下っぱだから」
帽子を脱いで汗を拭っているホル・ホースの都合には委細かまわず、節制はずらりと並んだ空き瓶と皮ケースを交互に眺めた。
「練習中かい?」
「ああそうだよ。今ならおまえが死んでも事故だぜ」
実際、撃ち殺しても何とかなるだろうが、さすがにそこまでする気はない。ホル・ホースは休憩がてら、ポケットの煙草をとりだした。
「ぜんぜん当たってねえじゃん」
「そりゃおまえ、当ててねえからだよ」
旨そうに吐き出した煙に目を細めながら『皇帝』を構えた。どんな教本にてらしてもデタラメな射撃姿勢から、三発を続けて発射する。
 節制の見守る前で、透明な弾丸は一直線にそれぞれ空き瓶の腹に向かって飛んで行き、瓶を叩き割る寸前で消滅した。スタンドが解除されたのだ。
「な?」
「なるほど」
「小ワザも磨かねえとな。いつ、こういう……」
ホル・ホースのウンチクなど、節制の耳には入っていないようだ。彼は足元のケースに目を落とし、
「こっちは?」
と尋ねた。
「これかー?」
説教でもするのかと思われたが、たちまちホル・ホースは相好を崩し、さっとしゃがみこんでケースを開けた。黒く艶光りする大きなリボルバーが、丁寧にしまわれている。
「コルトのコブラ。いいだろ? でっかくてよ。いいか、こいつはかの有名なケネディ暗殺事件でな……」
ガンマニアの親切な解説も、節制の耳を素通りしている。
「これも練習すんの?」
軽く舌打ちしたものの、欲求不満のホル・ホースは愚痴まじりに説明した。
「いやな、やろうと思ったらテレンスに『あんた常識ってもんがないんですか!』って噛みつかれてよ。『庭で銃声なんかがしてたら過激派と間違われるじゃないですか!』ってな」
「あ、絶対その後に『ただでさえ色々と面倒なんですから!』って言っただろ」
「言った! 言ったよ!」
二人は笑い声を弾けさせた。
「それで? おまえは何しにきたんだよ。俺の邪魔しに来たのか?」
「あんたの邪魔しておれに何の得があるよ?」
 節制は、おぼつかない手つきでリボルバーを取り出して点検している。
「お、弾が入ってる」
「汚ねえ手で触んなよ」
「おれ拳銃ってあんまり触ったことないんだよね。平和な暮らししてたから」
「ウソつけ!」
「いや、マジメに。やっぱ重いなあ」
本気なのか冗談なのか、節制はベルト位置からの早撃ちの動作を試している。
「執事サンがさ、明日の下見に行って来いって」
「明日ァ? ああ、砂漠で狙い撃ち作戦か」
「なんかそう言うとバカっぽいぜ?」
「うん、バカはおまえだな。俺じゃねえ」
「この野郎!」
ホル・ホースの言うのは、彼らの館を支えている活動の一環として、翌日に予定されている計画だった。ある街の要人を狙撃するそのプランには、彼ら二人が充てられている。
 太陽が高く燃えている空には、雲一片の気配すらない。
「これから砂漠かぁ? 病気になっちまうぞ」
「優しいテレンスさんのおっしゃるには、『今から行けば計画時刻と同じくらいには着けるでしょう』と。あと、『暑いぐらいじゃ死にゃあしませんよ。万一の事があったら相応の墓石たててあげます』だってさ」
ホル・ホースは沈痛な面持ちで煙を吐き出した。
「優しいねえ。涙が出るねえ」
「泣けるよねえ。きっと角砂糖みたいなカワイイ墓石たててくれるんだぜ」
節制もほっと溜め息を吐き、どういう訳か、
「これ、やっぱ反動もでかい?」
とリボルバーを示した。
「そりゃ、でけえよ。下手すりゃ手首いためるぜ」
「それはイヤだな」
そう言って彼はコルトの安全装置を外した。
「危ねえぞ。実弾だからな」
 注意してやったのを聞いているのか、いないのか、節制はホル・ホースが的にしていた空き瓶を狙っている。撃鉄はすでに起きていて、シングルアクションで発砲できる状態だ。
 照準を合わせたまま、節制は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「ホル・ホースさん、おれの思うにですね」
「おう」
「狙撃ってのは練習が大事っすよね。おれは撃たないけど」
「まあな」
「ここで一発、練習してから出かけたら、どんなもんでしょ?」
「うーん、そうだなぁ」
ホル・ホースも似たり寄ったりの、意地悪い笑顔になった。
「テレンスが近所とお役所に言い訳して回るぐらいで済むんじゃねえかな?」
「よーし」
 節制はあっさり引き金を引いた。
 大口径の拳銃は、誰にでも聞える派手な音をさせて実弾を撃ちだした。不思議なことに、水平に伸ばした節制の右手はびくともしない。コブラの強力な反動を全く感じないかのように、水鉄砲でも撃つみたいにして続けて二発、三発。
作品名:真昼の決闘 作家名:塚原