真昼の決闘
当たったのは最初の弾だけで、残りは芝生に穴を空けただけだ。
「あー、ダメだ。ズルした意味ねえな」
笑いながら開いた手と銃の間で、反動を吸収した『節制』がうごめいている。
ホル・ホースも笑って、
「ウマいこと考えたな。ヘッタくそだけど」
言い終わる前に『皇帝』が、彼らにしか聞えない銃声を上げた。それにつれて、片っ端から空き瓶が粉々になって吹き飛んでいく。一つ音がするごとに、きっちり順番に一発ずつで片付けて、最後に砕けた瓶の首が中空に跳ね飛ぶと、それを狙ってさらに二発、とうとう瓶は破片になった。
「ざっとこんなもんだな」
「おお、さすがプロ」
節制が拍手をしている後ろから、金切り声が飛んできた。
「なにやってんですか! ただでさえ色々と……」
テレンス・ダービーが館の窓から叫んでいる。
「来ますよ、ホル・ホースさん」
「だーいじょぶだ、あいつ足おそいから」
悠々とコルトをケースに収め、大事そうにかかえると、二人は顔を見合わせて、
「行くか」
「そうだね。それじゃ」
「逃げろ!!」
一目散に庭を駆け抜けた。
その晩、テレンスはいらいらしながら二人の帰りを待っていたが、どこに潜り込んだのか、とうとう彼らは翌日の計画開始ギリギリまで帰ってこなかったのだった。