僕の主成分、君への憎悪
「あ、総悟君こっちこっち」
「あぁ、すいやせん。待たせましたねぃ、情報屋の旦那」
「気にしないでよ。どうせまたあの副長さんでしょ?」
「そうなんでさぁ。全くいつになったらしんでくれるでしょうかねぃ、あの人は」
「あはは。相変わらずだなぁ。でもさ、この時間って君、休みじゃなかったよね?」
「ええ」
「それで追いかけられてたんじゃない?」
「そんなもんでさぁ。ですがね、旦那。今日のこの時間を指定したのは旦那じゃなかったですかぃ?」
「あぁ、そうだよ」
「情報屋の旦那なら幕府の下っ端の一隊長のスケジュールぐらい把握して俺の休みの日に予定いれることもできやしたよね?」
「まぁ、できたけどさぁ。
君、休日以外でもよくさぼってるじゃない。別にいいだろ?」
「そりゃあそうですけど。毎日が有給休暇の旦那にいわれちゃおしまいでさぁ」
「それはもう一人の旦那さん、でしょ?」
「あの人は毎日が有給休暇どころか毎日がマダオライフですよ。
ま、あんたもあんなふうにならないように気をつけなせぇ。・・・もう遅いかもしれやせんがねぃ」
「ふふ。総悟君、ちょっと最近瞳孔開き気味じゃない?ダメだなぁ、イライラしすぎはよくないよ?」
「大丈夫でさぁ。誰かさんのおすすめで毎日いちご牛乳飲んでるんで」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「すいません」
「おぅい、店員さん」
「こちらに土方スペシャル一つ」
「こっちに宇治銀時丼お願いしまさぁ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・旦那」
「・・・・なんだい」
「俺が甘党なのを知ってるのは流石です、けれど、あんたは一つ間違いやした。
確かに俺はあの犬の飯は心底不味いと思ってやすがね、残念なことに俺はあの味を食べ慣れちまってるんでさぁ」
「・・・ふぅん。あぁそう。興味ないな。ねぇ、総悟君」
「なんですかい」
「この場で俺に提供できる君の思いつく限りの二つのゲテモノのうち、甘い方を選んだのはほめてあげよう。
でもね、俺はゲテモノ――いや、言い変えよう。個性的な味がするものは何でも好きなんだよ。俺は人が好きだからね!だから君がどちらを選ぼうと俺は喜んで食べていたよ。残念だったね」
「じゃあ俺の分も食べやすかい?」
「それはいらない」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・総悟君、ダメだよ。こういうのはお互いによくない。別に俺達はお互いの腹の探り合いにここにきたわけじゃない。あくまで友好関係を深めに、だ。そうだろう?」
「そうですね。すいやせん」
「こちらこそ。・・・で、俺のあげたのの効果はどうだった?」
「いやぁ・・・それが、儀式の最中に土方に見つかっちまって」
「あぁ」
「なんとか『ランニング』ってごまかしたんですけど、やっぱりバレたでしょうねぃあれは」
「なんで『ランニング』・・・」
「そちらは相変わらずですかい?」
「あぁ。残念なことにね。浪人けしかけようが天人けしかけようがまだ生きてるんだよね。しんじらんなぁーい」
「トラックつっこませても生きてんだからしょうがねぇでさぁ。でも旦那、それならいっそのこと俺みたいに呪いの類に手ぇだせばいいじゃねぇですかい。何でそっち方面はやんねぇんです?」
「トラックに跳ねられても生きてる奴に、そんな不確かなもの、通じるかわからないじゃない」
「そりゃあそうですけどねぃ」
「でも、そろそろそっち方面も考えた方がいいのかなぁ。何やってもアイツしなないし。刺されても盛られても撃たれても生きてるってほんとアイツなんなの?」
「平和島静雄、取り立て屋の旦那でさぁ」
「・・・・まぁ、君の助けにも俺は感謝してるんだよ。あいつの情報が入ったら逐一知らせてくれるし、俺達の喧嘩も出来る限り穏便に計らってくれるし?本当に助かってるよ、一番隊隊長サマ」
「ドウイタシマシテ。もちろん本当に『俺達』にとって必要な情報でしたら教えられませんけど」
「それはもちろん承知の上だよ。それに、俺を何だと思ってるの?」
「新宿の情報屋の旦那、ですよねい?」
「・・・・君のそういうところ、結構好きだよ。
でもねぇ、そういう意味だと君の相手はシズちゃんの数万倍も殺しやすいと思うんだけどなぁ。なんでまだ殺せてないの?っていうか、殺す気あるの?」
「そういわれるのは心外でさぁ。今朝だってアイツの寝床の周りを隙間なくジャスタウェイで固めてきたんですがね」
「ジャスタウェイって何」
「『ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもない!』って万事屋の旦那がいってやした」
「・・・・・・・・それで?」
「俺も土方以外をどうこうしようとは思いやせん。だから今日アイツが休みで朝遅く起きるのを計算して、隊士の奴らが食堂に移動してアイツだけになったところを、こう、ボタンを押してちゅどーんってやろうと思ったんですけどねぃ」
「ダメだったと」
「ダメでした」
「へぇ、またなんで?副長さんがいつも通りの時刻に起きたとか?」
「違いやす」
「じゃあなんで」
「俺がアイツより遅く起きちまって、叩き起されたんでさぁ」
「・・・・・・・・」
「『キャア土方さんのえっちぃ私まだ着替えてないのにぃ』っていったらやけにどもって謝られて、それで廊下で待ってたようですがね。五分ぐらいたって何で男の着替えなんて待たなきゃいけねぇんだってぶちぎれて襖を開けた隙に、着替えを完了した俺がさっと」
「・・・・・・・・」
「で、今にいたりやす」
「・・・・・・・・ひとつ、聞いていいかな」
「なんですかい?」
「真選組って、大丈夫?」
「土方の野郎が生きてる限り問題大ありでさぁ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・はい?いえ、違います。こちらですよ」
「・・・ん?いや、俺じゃねぇよ、こっちでぃ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「シズちゃんはさっさとメタボになって糖尿病になってしね。生き地獄を見ろ。壊死しろ」
「高血圧になってしね土方。血管ブチ切れ過ぎてしね土方。煙草とコレステロールの相乗でしね土方」
「・・・・・・はぁ」
「じゃあ今日もお互い進展なしってとこかな?」
「残念ながらそのようですねぃ。・・・あ、俺は一つ弱みを握れやしたが」
「へぇ、おめでとう。何?」
「どうやらあの人たち、幽霊や化け物妖怪の類が苦手なようでして」
「あの人『たち』?」
「土方と万事屋の旦那でさぁ。ま、最近色々ありやしてね」
「色々、ねぇ。
・・・でも鬼の副長と白夜叉が揃いも揃って幽霊が苦手って。・・・おかしいなぁ」
「ん?」
「いや、何でもない。・・・これでシズちゃんもそういうのが苦手だったら笑っちゃうなぁ。想像しただけで笑えてくるよ」
「にやにや笑いが隠せてやせんぜ?旦那」
「君のとこの副長さんとシズちゃんって結構似てるから、もしかしてアイツも苦手かもね?」
「そうかもしれませんねぃ。・・・旦那、何か悪いこと考えてます?」
「やだなぁ、そういう総悟君こそ。君も悪いねぇ」
「いえいえ、旦那こそ」
「くっくっく」
「ふっふっふ」
「・・・そういや旦那、アレまだ続けてます?」
「ん?アレって?」
「あぁ、すいやせん。待たせましたねぃ、情報屋の旦那」
「気にしないでよ。どうせまたあの副長さんでしょ?」
「そうなんでさぁ。全くいつになったらしんでくれるでしょうかねぃ、あの人は」
「あはは。相変わらずだなぁ。でもさ、この時間って君、休みじゃなかったよね?」
「ええ」
「それで追いかけられてたんじゃない?」
「そんなもんでさぁ。ですがね、旦那。今日のこの時間を指定したのは旦那じゃなかったですかぃ?」
「あぁ、そうだよ」
「情報屋の旦那なら幕府の下っ端の一隊長のスケジュールぐらい把握して俺の休みの日に予定いれることもできやしたよね?」
「まぁ、できたけどさぁ。
君、休日以外でもよくさぼってるじゃない。別にいいだろ?」
「そりゃあそうですけど。毎日が有給休暇の旦那にいわれちゃおしまいでさぁ」
「それはもう一人の旦那さん、でしょ?」
「あの人は毎日が有給休暇どころか毎日がマダオライフですよ。
ま、あんたもあんなふうにならないように気をつけなせぇ。・・・もう遅いかもしれやせんがねぃ」
「ふふ。総悟君、ちょっと最近瞳孔開き気味じゃない?ダメだなぁ、イライラしすぎはよくないよ?」
「大丈夫でさぁ。誰かさんのおすすめで毎日いちご牛乳飲んでるんで」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「すいません」
「おぅい、店員さん」
「こちらに土方スペシャル一つ」
「こっちに宇治銀時丼お願いしまさぁ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・旦那」
「・・・・なんだい」
「俺が甘党なのを知ってるのは流石です、けれど、あんたは一つ間違いやした。
確かに俺はあの犬の飯は心底不味いと思ってやすがね、残念なことに俺はあの味を食べ慣れちまってるんでさぁ」
「・・・ふぅん。あぁそう。興味ないな。ねぇ、総悟君」
「なんですかい」
「この場で俺に提供できる君の思いつく限りの二つのゲテモノのうち、甘い方を選んだのはほめてあげよう。
でもね、俺はゲテモノ――いや、言い変えよう。個性的な味がするものは何でも好きなんだよ。俺は人が好きだからね!だから君がどちらを選ぼうと俺は喜んで食べていたよ。残念だったね」
「じゃあ俺の分も食べやすかい?」
「それはいらない」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・総悟君、ダメだよ。こういうのはお互いによくない。別に俺達はお互いの腹の探り合いにここにきたわけじゃない。あくまで友好関係を深めに、だ。そうだろう?」
「そうですね。すいやせん」
「こちらこそ。・・・で、俺のあげたのの効果はどうだった?」
「いやぁ・・・それが、儀式の最中に土方に見つかっちまって」
「あぁ」
「なんとか『ランニング』ってごまかしたんですけど、やっぱりバレたでしょうねぃあれは」
「なんで『ランニング』・・・」
「そちらは相変わらずですかい?」
「あぁ。残念なことにね。浪人けしかけようが天人けしかけようがまだ生きてるんだよね。しんじらんなぁーい」
「トラックつっこませても生きてんだからしょうがねぇでさぁ。でも旦那、それならいっそのこと俺みたいに呪いの類に手ぇだせばいいじゃねぇですかい。何でそっち方面はやんねぇんです?」
「トラックに跳ねられても生きてる奴に、そんな不確かなもの、通じるかわからないじゃない」
「そりゃあそうですけどねぃ」
「でも、そろそろそっち方面も考えた方がいいのかなぁ。何やってもアイツしなないし。刺されても盛られても撃たれても生きてるってほんとアイツなんなの?」
「平和島静雄、取り立て屋の旦那でさぁ」
「・・・・まぁ、君の助けにも俺は感謝してるんだよ。あいつの情報が入ったら逐一知らせてくれるし、俺達の喧嘩も出来る限り穏便に計らってくれるし?本当に助かってるよ、一番隊隊長サマ」
「ドウイタシマシテ。もちろん本当に『俺達』にとって必要な情報でしたら教えられませんけど」
「それはもちろん承知の上だよ。それに、俺を何だと思ってるの?」
「新宿の情報屋の旦那、ですよねい?」
「・・・・君のそういうところ、結構好きだよ。
でもねぇ、そういう意味だと君の相手はシズちゃんの数万倍も殺しやすいと思うんだけどなぁ。なんでまだ殺せてないの?っていうか、殺す気あるの?」
「そういわれるのは心外でさぁ。今朝だってアイツの寝床の周りを隙間なくジャスタウェイで固めてきたんですがね」
「ジャスタウェイって何」
「『ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもない!』って万事屋の旦那がいってやした」
「・・・・・・・・それで?」
「俺も土方以外をどうこうしようとは思いやせん。だから今日アイツが休みで朝遅く起きるのを計算して、隊士の奴らが食堂に移動してアイツだけになったところを、こう、ボタンを押してちゅどーんってやろうと思ったんですけどねぃ」
「ダメだったと」
「ダメでした」
「へぇ、またなんで?副長さんがいつも通りの時刻に起きたとか?」
「違いやす」
「じゃあなんで」
「俺がアイツより遅く起きちまって、叩き起されたんでさぁ」
「・・・・・・・・」
「『キャア土方さんのえっちぃ私まだ着替えてないのにぃ』っていったらやけにどもって謝られて、それで廊下で待ってたようですがね。五分ぐらいたって何で男の着替えなんて待たなきゃいけねぇんだってぶちぎれて襖を開けた隙に、着替えを完了した俺がさっと」
「・・・・・・・・」
「で、今にいたりやす」
「・・・・・・・・ひとつ、聞いていいかな」
「なんですかい?」
「真選組って、大丈夫?」
「土方の野郎が生きてる限り問題大ありでさぁ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・はい?いえ、違います。こちらですよ」
「・・・ん?いや、俺じゃねぇよ、こっちでぃ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「シズちゃんはさっさとメタボになって糖尿病になってしね。生き地獄を見ろ。壊死しろ」
「高血圧になってしね土方。血管ブチ切れ過ぎてしね土方。煙草とコレステロールの相乗でしね土方」
「・・・・・・はぁ」
「じゃあ今日もお互い進展なしってとこかな?」
「残念ながらそのようですねぃ。・・・あ、俺は一つ弱みを握れやしたが」
「へぇ、おめでとう。何?」
「どうやらあの人たち、幽霊や化け物妖怪の類が苦手なようでして」
「あの人『たち』?」
「土方と万事屋の旦那でさぁ。ま、最近色々ありやしてね」
「色々、ねぇ。
・・・でも鬼の副長と白夜叉が揃いも揃って幽霊が苦手って。・・・おかしいなぁ」
「ん?」
「いや、何でもない。・・・これでシズちゃんもそういうのが苦手だったら笑っちゃうなぁ。想像しただけで笑えてくるよ」
「にやにや笑いが隠せてやせんぜ?旦那」
「君のとこの副長さんとシズちゃんって結構似てるから、もしかしてアイツも苦手かもね?」
「そうかもしれませんねぃ。・・・旦那、何か悪いこと考えてます?」
「やだなぁ、そういう総悟君こそ。君も悪いねぇ」
「いえいえ、旦那こそ」
「くっくっく」
「ふっふっふ」
「・・・そういや旦那、アレまだ続けてます?」
「ん?アレって?」
作品名:僕の主成分、君への憎悪 作家名:草葉恭狸