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君が好きだって言ってるの。

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個室に閉じこもって、紙袋を開く。ガサガサと中身を取り出した帝人は、その値札についていた金額に軽くめまいがした。何これゼロ一つ多くない?一万円以上する服なんて、帝人は一枚も持っていないのだが。しかも、靴下まである。
これはいくらなんでも申し訳ない、と思う反面、着ないと臨也がうるさいのも分かっている。ほんとにあの人なんでこんな、今日に限っていい人なんだろう。帝人は素直に制服を紙袋に入れて、代わりにシンプルなシャツと怪我を気遣ってだろう、ゆったりとしたデニムに着替えた。ついでに、とっくに血みどろだった靴下も丸めてぽいだ。新品の靴下をはいて、スニーカーに足を突っ込んだら、完全お出かけスタイル。
「・・・あの、臨也さん」
そっと個室から出たなら、待っていた臨也がじっと帝人を一瞥した。似合っているかどうかを確かめるような視線だ。
「何も、上まで買ってくれなくてもよかったのに」
「君はデニムと制服の上っていう奇妙な格好で人前に出るつもりなの?」
「・・・いえ、買っていただいて助かりました・・・」
笑えない格好だ、都市伝説になってしまう。いやそんな御大層なものではないけれど。
「・・・今日は送っていくから」
なぜか有無を言わせぬ口調でそう言い切られて、またしてもはあ、と頷くことしかできない。つかまって、と差し出される手に素直に従いながら、本当に今日はこの人どうしてしまったのだろう、と考える。むすっとしたその横顔をちらりと仰ぎ見てみたけれど、答えは出なかった。
手をひかれて、でも怪我をした足の負担にならないようにゆっくりと歩いてくれる気づかいとか。手当てをしてくれた指先とか。思い出すと、なんだかとんでもない借りを作ったような気になって、帝人は息をのんだ。
「あ、あの、服のお金・・・」
「払えないでしょ貧乏高校生が。払えないような服選んだんだから君はおとなしく俺の好意を受け取りなさい」
「でも、申し訳なくて、それに手当てもしてもらっちゃいましたし、何かお礼を・・・」
借りを作りっぱなしにしておいたら、あとで何が起こるか分からないではないか。というのはまあ本心何だけれど。ただほんの少し、これが本当に純粋な好意だと言うのなら、やっぱりお返しをしたいなと思うのも当然のことなので。
そんな風に告げると臨也は一瞬ちらりと帝人を見て、小さく息を吐いた。
「帝人君さあ、そういうの誰にでも言わないほうがいいよ。お礼がしたいとか。何要求されるか分からないんだからね」
「え、でも」
「っていうか俺相手に言わないほうがいい、そういうの」
意味が解らない。
はあ?と小さく返して。よくよくその言葉を反芻してみたけれど、どうも意味がとれない。なんで臨也に言わないほうがいいのだろう。だってこのお礼の言葉は、臨也に言わなかったら誰に言えばいいのか。帝人はぐるぐると思案して、やっぱり答えは出なかった。
そのまま無言で、手を惹かれ続けて数分。ようやく帝人の家が見えてきたところで、臨也が何か言いたそうに帝人を見る。
沈黙が痛いんですけど。
何を言われるのかとただその目を見返したら、臨也はふてくされたような顔のまま、ぼそりと言った。
「俺をいい人だなんて思ったらだめなんだからね」
「は?」
帝人は瞬きをして、首をかしげる。
普通自分をいい人と思うな、だなんて、言うだろうか。臨也は変人だから言うのかもしれないけど。でもいつもだったらそういう台詞は、人をからかうような笑顔に乗せられるものだ。なのに今臨也は、なぜこんなふてくされたような顔をしているのだろう。
いや、もしかして。
困ってる、のかな?
「あの、」
どうしてそんな顔をしているんですか、と尋ねようとした帝人の、前に。
迫る、影が。
あれ、なんで。
「いざ・・・んむっ」
・・・意味が解らない。
なんで、どうして、こんな。
っていうか、これ、くちびるが、くちびる、に。
思わず固まった帝人に、やっぱり憮然とした顔のまま離れた臨也は、少し頬を染めて一歩、距離をとり。


「俺をただのいい人だとか、思ったら絶対にだめなんだからね!」


びしっと指差され、高らかに宣言されたその言葉の意味を。
帝人が理解するまで、あと・・・。