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ふれあい

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【ふれあい】

─────────滅びた古の都には、古代竜が住んでいる。

とある村やある大都市で伝わっている伝説、世界の何処かには遠い昔に滅んでしまった都があって、
そこには非常に強い力を持った古代竜が居ると言うが、誰も都には辿り着けない。まるで都が拒絶するかのように
はね除けてしまう。
だから誰も辿り着けない。あるかどうかも解らない。そう言われていた。
「……ここが古の都なんだ。誰も辿り着けなかった……」
真っ白い。
高尾和成の眼前に広がるのは廃墟だ。建物は皆、白い石で出来ている。光沢のある石だ。晴れた空の下で都は静かに
佇んでいた。栄華を誇った都だというのは高尾にも解る。
「辿り着けないようになっているからな」
素っ気なく言ったのは眼鏡をかけた高尾よりも身長の高い青年だった。緑間真太郎と名乗った青年は古代竜だ。
人間の姿をしているが正体は竜である。
「これだけ広いと竜の姿で過ごしても、平気そうだよね」
滅びた都は広大だ。高尾は大都市には行ったことはなかったが、これほど広い都は王国や帝国の首都ぐらいだろう。
「都では人間の姿で居たが……昔は人がいたのだぞ」
「……竜の姿じゃないんだ」
「目立つだろう。人間の姿の方が小回りがきく」
緑間は人間にしては身長が高いが、竜の姿よりも小さい。
都では巨大な竜の姿よりも人間の姿の方が緑間も過ごしやすいため、緑間は人間の姿をとり続けていた。
「真ん中のあの建物は神殿で奥は城かな」
「そうだ」
「行きたい」
「……勝手に行ったらどうだ? 気がすんだら適当な人里に送ってやる」
「案内してよ。住民なんだから……住民って真ちゃんだけなの?」
高尾と緑間が居るのは古都の入り口だ。門のすぐ下に居る。
都の中央には巨大な神殿が存在していた。高尾が住んでいる村にも小さいが神殿があった。神殿は世界を造ったとされる
神々を奉っている。奥には真っ白な城があった。王城だろう。
緑間は高尾に出ていって欲しそうだった。
古都の下にある小さな村に高尾は住んでいたのだが、竜の花嫁に出された。花嫁と言えば聞こえは良さそうだが、
竜に対する生贄だ。村で厄災が続いていて、竜の祟りだと感じた村は高尾を生贄にして祟りを収めようとしたのだ。
緑間は全く村には関与しておらず、災厄も緑間のせいではない。
「住んでいるのは俺ぐらいとだ…後は動物の王達が残してくれた獣や精霊達しか居ない」
「精霊って真ちゃん見えるんだ。そしたらさ、魔術とか使えるの?」
「……竜は魔術など使わなくてもブレスがあるが……魔術も使えるがな」
「どんなの? ブレスって人間の姿でも吐けるの?」
─────────騒がしい奴だ。
 緑間の高尾に対する印象は”騒がしい”で固定されている。
 魔術とは世界を構成している要素の一つである精霊達の力を借りて行える術だ。
 精霊は世界の理を現す元素が顕現した存在である。
 火をおこす時には炎の精霊が、風が吹くのは風の精霊のお陰とされている。竜は産まれてすぐに精霊と契約をして、
精霊の力を扱えるようになる。
「魔術を見せてやる……」
 ブレスは吐くことには吐けるが緑間は人間の姿では吐きたくはなかった。転がっている建物の巨大な破片に向かって緑間は手を伸ばす。
呪文の詠唱をすることなく、緑間は魔術を発動させた。巨大な白い破片に黒い風が吹き付け、粉々に砕いてしまう。
石は砂粒となっていった。
大人がハンマーを使って砕こうとしても何回も振り下ろさなければ砕けなさそうな石を呆気なく破壊した。
古代竜である緑間には様々な加護が与えられている。魔術もそのうちの一つだ。
今の人間が……人間の世界に居る魔術師が研鑽を続けてようやく使えるようになる風と闇二つの精霊の力を使った魔術だ。
高尾を驚かせて速く去らせるために緑間は使用した。
「すっげー!! 今のどうやったの。魔術ってこんなことが出来るの? 真ちゃんだから出来たの? 魔術師って昔に村に来たことが
あったけど風をちょっと吹かせたりするぐらいしか出来なかったよ。特訓したらオレも出来るかな……」
「……驚かないのか?」
「驚いてるよ。解らない? 感動してる……他にも出来る?」
目を輝かせて緑間の服の裾を引っ張る高尾に緑間は何も言えず、眼鏡のブリッジを押し上げることしか出来なかった。



疲労困憊した緑間は城の一室で、自分が使っている部屋に入る。
神殿を案内して城を案内して、適当に部屋を使えと言い、高尾を振り払うようにして、どうにか自分の領域に戻ってきた。
「今の人間はあの魔術を使えば驚くはずなのに」
力を奪われてしまった人間はかつてのように誰でも魔術を使えるわけではなくなっているはずだ。
あの魔術が自分に飛んできたらとは高尾は考えなかったのだろうか。贄として捧げられた者達とはさほど会話もせずに
送り届けてきた。
「……こんなに長く会話をしたのは青峰以来だな」
青峰、と緑間は自分の同胞であり、兄弟とも取れる者の名を呟く。青峰大輝は古代竜のうち、一体であり、都を出ていった竜の一人だ。
古代竜は全員で六人居る。昔はもう少し居たが今は六人だけだ。都に残ったのは緑間だけである。
出ていった者達の中で青峰ともう一人はたまに帰ってきていた。残り二人、黄色の古代竜と黒色の古代竜は都には帰ってこない。
百年ほど前に青峰は都に土産を持って城の中に来た。
「変わりはないようだな。緑間」
「お前も相変わらずのようだな。青峰……神々には迷惑をかけていないか?」
「かけてねえよ。動物の王達ならかけたけどよ」
「……お前という奴は……」
会話を回想する。
青峰は土産と言って酒や果物を持って来ていた。褐色の肌に青い髪をした青峰は剣士のフリをして旅をしているらしかった。
都が栄華を極めていた時も青峰はトラブルメイカーだった。
動物の王の一柱である牙王と三日三晩戦いあったり、鳥王の子供達が空で偉そうにしているを理由に勝負を挑み、
かなりの損害を与えたとか、緑間の脳裏には話が次々と浮かぶ。
「黄瀬とは逢ったが、テツとは逢ってないな」
「黒子とお前が会うことを神々は戒めている。黒子も守っているのだよ」
黄瀬涼太と黒子テツヤは帰ってこない古代竜であり、青峰と同じように世界を旅していたが、共に行動はしていない。
古代竜は共に行動するなと神々に言われているからだ。古代竜の力は強すぎて今の世界に悪影響を及ぼしてしまう。
「昔じゃねえからな……昔はよく組んでは戦争したもんだけど」
「……時の流れというのは速い……遅いのか?」
「お前の場合は一人で居るからな。人里に出れば別だが」
廃都から出た者達は人間の世界で暮らしている。たまに離れることもあるが、少しだけだ。
緑間の時間の流れというのはゆっくりであり、青峰と緑間は百年以上ぶりに出会ったが、緑間にしてみれば百年という感覚が
無いのだろう。”一人で寂しい”と考えることも緑間には無さそうだ。
永遠とも呼べる寿命が与えられている古代竜は自分たちは人を置き去りにする者だと考えるところがある。
「俺がふもとの村に出たら怯えられる以前に俺はこの都市から出る気は無いのだよ」
作品名:ふれあい 作家名:高月翡翠