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ふれあい

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「引きこもりだな。引きこもってるぐらいなら身体動かせよ。付き合うぜ?」
「お前が戦いたいだけだろう……青峰……」
青峰は城の外に出る。緑間も出た。
古代竜の中でも青峰は好戦的な部類に入る。十メートルほど緑間と青峰は距離を取った。
「いつものルールでな」
「……承知している」
いつものルールというのは最初は人間の姿で戦い、どちらかが限界を迎えたら竜の姿となり、その状態で戦うと言うものだ。
古代竜は肉弾戦も出来るし魔術も出来るが、青峰は肉弾戦を、緑間は魔術を好んで使っていた。
緑間が言ったと同時に青峰が眼前に現れて拳を突き出してきた。そのまま緑間は拳を掴むと青峰に風を叩き込んだ。
それが始まりの合図となり二人は戦い続けた。
回想終了。
最後にこの都市に来たのは青峰だ。その少し前にもう一人来ているが、訪問者と言えばこの二人ぐらいである。
神々も”神竜王”も話しかけたりはしてこない。変化がない緑間だ。見ているだけで十分なのだろう。
部屋の扉がノックされる。緑間はドアノブを捻った。
「真ちゃん」
「……何か用か?」
「お城の見取り図頂戴。大きいよ。この城」
「神聖王国の中心の更に王の住処だぞ。当然だ。地図は……無いな」
高尾は緑間の前に手を出してきた。城が大きすぎるという。緑間はずっと住んでいたために内部は把握しているが、高尾は違う。
「ここに俺は住むんだから中を知りたいのに……」
「……住むだと……?」
「俺、村を追い出されたし、新天地に行ってもここに住んでも新しいところで何かを始めるってのは、同じじゃん。父さんと母さんが死んで俺一人だから、選ばれたんだよね」
竜の花嫁というのは、村に居なくても良い人間が選ばれる。誰も彼も自分の家族を竜の生贄にはしたくはない。
住むというのは緑間にとっては予想外の発言だ。
「都市に残った遺産が目当てなのか」
「遺産? 違うよ。真ちゃんに興味があるの」
「……興味……? お前に俺が殺せるとは……」
「あのさ。真ちゃん……もの凄い疑り深いよ……古代竜ってみんなこんな感じ?」
仮にここに他の古代竜が居たならば緑間だけだ、と答えるだろう。緑間は殆ど人間に逢わずに生活をしてきた。都市に人間が
住んでいた頃はまだ人間と会話をしていたし応対も出来ていたが一人の生活が長すぎた上に慣れた者としか会話をせず、
他の竜の贄とも短い会話しかしなかったので、人間への応対が出来なくなってきているのだ。
「こんなところに住んだとしても意味がないだろう」
「意味がないっていうなら……真ちゃんはどうしてこんなところにいるの?」
逆に問われた。高尾は緑間を見上げる。
答えに偽りは許されず、無言で通すことも許されない。答えなければならないと緑間は感じた。
「……俺ぐらいは居なければ、いけないのだよ。誰も神聖王国には残りたがらなかった。だが……ここは俺たちの故郷だ」
「神聖王国……」
「ここのことだ」
緑間は顔を悲しそうに歪めた。
都が何故滅びたかを高尾は知らないが、都市の惨状と緑間の表情から、悲惨な事件が起きたことを察する。
俺たちと緑間が複数形にしたのは他の古代竜のことも含めているためだ。
「なら、俺も残る。俺は竜の花嫁だもん。真ちゃんのお嫁さんだし」
「……お前は男だろう?」
「でも、嫁だもん……残るからね!」
花嫁というのは人間の世界では伴侶と一緒に居るものだ。苦しい時も楽しい時も居る。高尾は緑間を一人にはしておけなかった。
側に居たいと願ったのだ。
「……勝手にしろ」
「だから見取り図」
「探してみる……図書館か……何処かにあるはずだ」
見取り図に話が戻った。緑間は休むことを止めて高尾が使う地図を探すことにした。
人間との交流は緑間にとっては百年以上ぶりのことである。緑間は部屋を出ると廊下を歩き、図書館の扉を開けた。
ホコリが舞う。
「ゲホゲホッ、埃だらけ……」
「掃除する」
高尾がホコリで咳き込んだ。緑間は指を弾くと風が舞い上がり、ホコリを押し流していく。
「……魔術すげー……俺も部屋ぐらいは掃除しないと、何処もホコリだらけだったもん。掃除道具は?」
「掃除道具なんて使った覚えがないぞ」
はっきりと緑間は言う。
魔術ですませられることを掃除道具を使ってやると言うことはないのだ。武器を作る時などは手順を踏むが掃除や家事は魔術だ。
「駄目すぎ」
「何が駄目なのだよ!?」
駄目だと言われた理由が分からず緑間が驚く。図書館は広い部屋を丸ごと一つ使っている。高尾が試しに本棚の本を一冊取ったが
書いてあることが読めない。高尾は読み書きが出来るが知っている言語ではないのだ。
「……何語……」
「人間は言葉が変わったからな……読めないか。その本は料理の本だ」
「料理!? 読みたい……けど読めない」
「地図が見つかったら訳してやる」
緑間は地図を探し始める。僅かではあるが高尾に対する態度が柔らかくはなった。
高尾は嬉しくなり、緑間の後ろを姿を笑顔で眺める。本棚の間を見たりして緑間は城の地図を探していた。


【Fin】
作品名:ふれあい 作家名:高月翡翠