CigarKiss
「久しぶりだな、帰ってくるのも・・・」
「・・・マジかよ、着替えとかどうしてたわけ?」
「買いに行かせたり、部下に取りに帰らせたり、かな・・・」
ベルナルドの家に帰り、勝手知ったる我が家のように適当にグラスと氷と酒を用意しながら、声を掛ける。ベルナルドはリビングにあるカウチソファーに浅く腰掛け、新しい煙草に火を付けつつ苦笑いを浮かべている。
「・・・てかさぁー、それって、部下はベルナルドの家の鍵持ってるってわけ?」
「いや、その時は鍵を渡しておいただけだが・・・」
「ふーん・・・そう」
話を聞きつつ、1つだけグラスに酒を注ぎそのまま自分だけが飲み干す。
ベルナルドの話を聞いてるとなんだか無性に腹が立ってくるのはなんでだ・・・?
酒を飲み干し、振り返るといつも通り微笑を浮かべたベルナルドが煙草をふかしている。
「なぁ・・・ベルナルド、俺にも煙草ちょーだい」
「ああ・・・新しいのがそこに」
「んにゃ、これがいい」
グラスをテーブルに置いて、ソファーに座っているベルナルドの前に立つと、俺はにっこり笑って口に咥えていた煙草を奪い取る。
そしてそのままベルナルドの肩を押して、ベルナルドをカウチソファーに押し倒す。
「なっ・・・ちょ・・・ジャン!?」
「ねぇ・・・もしかして、私とのキスより煙草とのキスの方が多いんじゃない?ダーリン」
妬けちゃうわ・・・。
そんな軽口を叩きつつ、ソファーに仰向けに寝転がっているベルナルドの膝の上に馬乗りに座る。
なんだか、いつも見上げているから、この体勢は非常に新鮮で面白い。
少し戸惑った表情を浮かべているベルナルドがなんだか可愛くて、くすっと笑ってやるとベルナルドはしてやられたとばかりに苦笑いを浮かべ、そっと俺の頭に手を伸ばし俺の髪に触れる。
「なんだい?俺とキスができなくて、寂しかったのかい?ハニー」
「私のことなんてもう飽きちゃったのかと思ったくらいよ、ダーリン」
「それは寂しい思いをさせて悪かったね・・・今日は思う存分弁解させてくれるかい?マイスイートハニー」
俺の髪を触っていた手がそっと俺の頬に滑り落ちてゆっくり撫でる。
その大きな手の温かさになんとなく気持ちよくなりつつも、煙草を持っていない方の手でベルナルドのネクタイを持ち上げ、そっとそのネクタイに口付けると相手に向かって軽く舌を出す。
「こんなフレンチキスじゃ俺は納得しない、ぜ?」
「ははっ・・・お任せあれ、俺のお姫様。ぐちゃぐちゃに溶けてしまうほどのキスをしてあげよう」
「この、エロ親父」
お互い笑いながら顔を近づける。
久しぶりのキスは、想像していたよりもずっと濃厚で、すごく煙草の味がした。
その煙草の味が消えるまで俺たちは何度も何度も口付けを繰り返し足りなかった時間と感触を確かめ合った。
「愛してるよ、ジャン」
俺の方が愛してるよ、なぁ?俺の愛しのダメ親父。