小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章
universe00 還らざる時の始まり
男が、死んでいた。
男らしい角ばった顔立ち、2メートルを越える身長、鍛え上げられた筋肉。体毛の生えた大きな耳が、彼が「ビースト」という種族であることを告げる。
彼の着衣はほとんど原型をとどめてはいなかった。全身に多数の傷を負い、どれが致命傷であるかさえ分からないほどに傷ついていた。
ただ不思議な事に、彼の左胸、つまり心臓付近の直径30センチほどの肌のみが、傷ひとつない状態だった。
だが、その表情は安らかで、まるで眠りについているような微笑みをたたえている。それがせめてもの救いだと思わせた。
とにかく――――彼はそこで、死んでいた。
たった一人で。
作品名:小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章 作家名:勇魚