小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章
そして直後。下からの衝撃。斧が地面スレスレの距離を滑空してから、上へと振り上げられる。それを叩き付けられた三人の体が宙を舞う。こんな簡単に人間って飛ぶんだ、とヴァルキリーは妙に感心してしまった。
「オルハ!」
頷いてオルハが空中めがけて発砲する。空中だと回避行動が取れないのをいいことに、弾はキャストの体を好き勝手に貫いてゆく。
「さてと、お疲れだったな!」
ランディが降りかぶった。ゴルフのスイングのように体をひねって斧を肩の上に構え、落ちてきたキャストが地面に着く前に一気に振り抜く。
衝撃でキャストたちの体はただの鉄屑となり、手や足などのパーツがもげて、ばらばらと宙を舞った。
ヴァルキリーはその光景をただ見ていた。前線への到着が遅れたのもあるが、二人の戦いぶりに圧倒されてしまっていた。コンビネーションも良く、あまりにも場慣れしすぎている。どれほどの戦場を潜り抜けてきたというのだ、彼らは。
「さーて」
ランディが、斧を地面にどすんと立てた。
「出て来いよ」
「……これは予想外の幕引きですね」
奥の木陰から人影が現れる。
「これだけの腕を持ったガーディアンが同行しているとは」
一人のキャストだった。内部が見える頭部パーツに、細いシルエットと無表情なフェイス。そして、左目の下には隈取を模したマーキングがされている。
「……!!」
その姿に、オルハは息を呑んだ。
作品名:小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章 作家名:勇魚