小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章
……正直、オルハの感情は理解できなかった。彼は物心ついた時から両親はおらず、モトゥブの下層にある廃棄物の投棄場所――通称"ゴミ捨て場"――で、ストリートチルドレンとしてずっと生きてきたからだ。仲間意識はかなり強いのだが、絶対的な繋がりを持つ「家族」という概念には非常に乏しい。
「いいじゃねぇか、そう悩める相手がいるってのは幸せな事だぜ」
だからとりあえず考えるのをやめて、その大きな手をそっとオルハの頭に乗せた。分からないものは仕様がない、だからいつも通りに慰めようと。
「……ランディ」
「ん?」
「ボクを子供扱いしたな」
オルハがゆらーりと振り向いて、怪しい光を放つ視線を向ける。
「! ち、ちがっ……これは無意識にだな、慰めようと思っ……ぎゃああぁぁぁぁ!」
ランディの虚しい叫びが、森にこだました。
作品名:小説PSU EP1「還らざる半世紀の終りに」 第1章 作家名:勇魚