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ノミ蟲さんの怪奇現象。

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 その日は日曜日だった。
 朝から愛しいセルティとデートする気でいた新羅は、休日だというのに急に入った仕事のせいで慌てて出て行った恋人を涙を呑んで見送り、PCを起動させながらこうなったら日課のセルティに着てもらいたい服リストづくりで一日を潰そう、と固く心に決めたところだった。
 テーブルの上に放置されていた携帯が勢いよく鳴ったとき、すぐに着信が通話だとわかったので、はじめは無視しようと思った。だって、愛するセルティは通話なんてしてくるはずがない。しかしもしかすると急患かもしれないと思い直して、新羅は仕方なく携帯電話に指を伸ばした。
「んーーーーと、ど、か、な、い!」
 PCデスクの前から椅子に座ったまま手を伸ばしているので、だいたい2、3メートルほど離れている携帯に届くわけがないのだが、30秒ほどそんな遊びを楽しんでから新羅は余裕たっぷりで椅子のキャスターを転がして床を滑り携帯を手にとった。
 そして着信表示の名前を見て──冷や汗が背中を流れ落ちる。
(あは・・・僕の人生・・・・詰んだかも・・・・)
 既にコールは五回を超えた。短い迷いと緊張のあとで、これ以上の遅延はまさしく命取りと通話ボタンを押して、初っ端の怒声に備えた。が。
「新羅かっ!? おい、てめぇ今家にいんのか!」
 平和島静雄。そう携帯の液晶ディスプレイに表示された友人の名前から、新羅はてっきり、電話に出るのが遅れたことを力の限り罵倒されると思っていたので、一瞬ぽかんと呆けてしまう。受話口から吐き出された言葉は、勢いよく耳に飛び込んではきたが罵声でも怒声でもなく、ただ焦っているだけのように聞こえる。
「おい! ・・・・・おい新羅っ!? ・・・聞いてんのか!?」
「・・・あ・・うん。聞いてる。ちゃんと聞いてるよ静雄。どうしたの? 誰か怪我でもした?」
 我に返って思いつく疑問を返すと、すこしの間沈黙が会話を止めた。携帯の向こうから洩れ聞こえる呻き声から珍しい逡巡が窺えて新羅の好奇心がくすぐられる。新羅に電話をかけてきたということは、医学的な観点から解決できる、もしくはできそうだと思われる何らかの問題が、静雄の近くで発生しているようだ。もしかしたら静雄の知識では理解できそうもない怪奇現象が起こっているのかもしれない。
 愛しのセルティとの休日には及ばないけれど、すこしは退屈が紛れそうだ。そんなことを確かに考えながら静雄の言葉を待つ。
「けが・・・・・や、怪我・・・とかは・・してねぇ・・・・・・・・・・けど」
 途切れ途切れに呟く声は明らかに何かに戸惑っていた。静雄はあまりにも突飛な出来事に対しては怒りで処理を行ってしまうため、戸惑うということはあまりない。そうすると、やはり最初の推察どおり、静雄の身近なところで怪異が起こっているのに違いない。新羅は段々と気分が盛り上がってくるのを感じていた。第一声で新羅の在宅を確かめたということは、今静雄はこのマンションに向かっているということだろう。
 もしかしなくても、怪奇現象に立ち会うチャンス。
 思わず小さくガッツポーズなどしてしまった新羅は、当然だけれどもまだ知らなかった。まさかそんな好奇心のために、自分がとんでもなくめんどくさい出来事に首を突っ込むはめになろうとは。