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白昼夢

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しゃくしゃくしゃく

今日も暑い
蝉の元気さにうんざりしながら舌に溶ける冷たさに身体を休める。
今年の夏は猛暑だ。
普段動くのは夜だが聞き込みは日が落ちてからやるわけにはいかない。
「…しかし暑いなぁ」
手の甲で汗を拭い、ふと前方に人だかりが出来ている集落を見つける。
こんな暑い日だ。冷えた物ならなんだって売れるだろう。
自分も紅く染まった氷の山を切り崩す。
ああ暑い。

「へいっ毎度~」
ただその声の響きに覚えがあった。
なんとなく山を切り崩す速度が落ちる。
しゃく…掬われた氷が舌に溶け、甘い味が口内を支配した。

最後に会ったのはおよそ一年前。残暑が落ち着いた秋頃だったと思う。
しかし彼の印象は1番あの頃が強い。水色の衣を纏い、自分の周りをよく駆けていたあの頃。悪戯ばかりして保護者である人物に殴られてばかりいた。
それから、もうだいぶ年月が経った気がする。

「あれ、利吉さんじゃないっすか」
どうやら向こうから気づいたらしい。
茶店の日陰に留まる私目掛けて駆けてくる。肩から提げる箱が重く揺れていた。
恐らく先程までぎっしり瓶が詰まっていただろうそれは中身が無くなってもそれなりの重さを保ち揺れている。
彼が小さい頃から使っていた商売道具だ。時の流れと彼の苦労を物語るようにだいぶ薄汚れた色をしている。
「こんなとこで何しているんすか?あ、サボり?」
人の悪い笑みで小突かれ、だったら貢いでくれればよかったのにと軽い冗談を投げてきた。
彼にとっては軽い冗談でなく本気なのだろうけど。
「君と一緒にしてもらっては困るなぁ。これは休憩さ」
「なんだ、変わんないじゃないっすか」
へへっと笑う。失礼なところも相変わらず顕在のようだ。
「こらこら、一人前の口は一人前になってから言うもんだよ」
「へーい」
これまた昔のように口を尖らせ、全く反省の様子を見せない彼。
その懐かしい感じに久しぶりに話しをしたいと思った。
あんなに小さかった彼が、あの時と同じ仕草で目の前にいる。
成長期真っ只中の身体はすらりと伸び、袖からは引き締まった筋肉を覗かせる。
それでも細い方であろう。
土井先生がいるから三食食べないことはないだろうが、ケチな性格が食生活にも出ているということが易々と想像出来た。
男らしい身体、とは言い難い身体を眺めていたら彼の瞳と重なった。
きっとこの釣り目がかった瞳もますます彼をシャープな印象にしているんだろうな
「なんすか?なんか付いてます?」
「いや…そうだね少しサボろうか。時間ある?」
作品名:白昼夢 作家名:いるあ