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【テニプリ】Marking

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深夜、二時過ぎ…。

 携帯の無機質な着信音が鳴り響き、むっと眉を寄せ、手塚はシーツを引き寄せ潜り込む。こんな非常識な時間に電話を掛けてくる相手はひとりしかいない。ようやく浅い微睡みにたどり着いたばかりで、引き戻された怒りは大きい。無視を決め込んで、手塚は目をきつく閉じる。しかし、着信音は止む気配がない。
(…っ、煩い)
今日に限って携帯の電源を切り忘れたことを後悔しながら、手塚は嫌々、腕を伸ばすとベッドサイドの携帯を掴んだ。







「…今、何時だと思ってるんだ?」

思い切り不機嫌な声を出す。電話の向こうの相手は気にする様子もない。
『起きてんじゃねぇか。さっさと出ろよ』
傍若無人ぷりは相変わらずな男のやたらと艶っぽい声に頭痛がする。手塚は眉間に皺を寄せた。
「…一体、こんな夜中に何の用だ」
『つれねぇな。他に台詞はねぇのか』
「ないな。…跡部、大した用件でないなら切るぞ」
剣呑な手塚の口調に電話口の跡部景吾は溜息を吐いた。
『…っと、お前、越前と俺とじゃ態度違うな』
「恋人でもない、非常識な時間に電話を掛けてくる男に優しく出来るか。早く、用件を言え」
レポート提出に時間が掛かり、もう三日まともに寝ていない。ようやく徹夜から解放され、眠りについた矢先、くだらない用件で叩き起こされれば腹が立つ。
『用件な。大したことじゃねぇんだがよ』
「…切るぞ」
『おい、話は最後まで聞けよ。お前の大事なマイラバーのことだぜ?』
電話の向こう、思わせぶりにそう言う跡部に手塚は眉間を押さえ、溜息を吐いた。
「…リョーマが、どうかしたのか?」
現在、プロテニスプレイヤーになり、世界を巡るリョーマとは遠距離恋愛中。そんなリョーマとの付き合いは十年目になる。そして、こんな非常識な時間に電話を掛けてくる跡部との付き合いはリョーマよりも少し長い。その跡部は、リョーマと手塚が恋仲だと知ってから何かとちょっかいと言う名の世話を焼いてくる。今回もそれらしい。
『アン?大したことじゃないんだけどよ』
こちらが興味を持ったと見るや、急に勿体ぶった口調になった跡部にムッとしつつも、手塚は口を開いた。
「勿体ぶらずにさっさと言え。俺は眠いんだ」
密かに怒りを滲ませた声に、やれやれと跡部の溜息が聞こえた。
『明日、…ってもう今日か…発売の週刊誌によ、越前の記事出てるぜ。見てみな』
作品名:【テニプリ】Marking 作家名:冬故