二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

夏ノワスレモノ

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
夏ノワスレモノ



命の終わりを知った時。
貴方の生きた証を追った、あの夏。











〜箱庭の少年編〜









春の昼下がり。
小さな庭で少年は一人、空を見上げる。

今日は数値は37.8℃だった。
熱があるせいか少し体がダルくていう事をきかない。
だけど、この体温変化も体のパーツが馴染んできている証拠だと父さんは言っていた。

彼は、人間の捨てられたパーツから出来た「正臣」という名前の人造人間。
ほぼ、本物の人間と何ら変わりは無かった。
現代の裏社会では人造人間の商品化の為に、様々な実験が行われ
人造人間実験学者が増えてきている。
正臣を産んだ学者はその中でも指折りの学者。
正臣が産まれ、今も生きていることは奇跡に近かった。
今まで生まれた人造人間の中で成功、今も行き続けている例は殆ど無い。
正臣の誕生は、きっとこの世界を大きく揺らがすものになるだろうと
その学者は言っていた。

「もうすぐ…高校生…か」

指の間から太陽を覗き込む。
春の太陽は彼の茶色い瞳をキラキラと輝かせた。

彼は誕生してから三ヶ月で今の体まで成長した。
そのうちの二ヶ月間は成長と共に眠り続け、脳内に生きていくために必要な
記憶をメモリーされ、残りの一ヶ月は体を慣れさせる日々。
もうすぐ、薬によってのその急な成長も止まり普通の16歳に追いつく。
そこから先は通常の人間同様、成長していく。

だから、普通の人間と同じように生活できる。
それが正臣にとっては何よりも楽しみな事だった。


ふと、庭の緑の中に黒い影が映る。


なんだろう。

正臣が視線を移す、その先には黒いコートに身を包み、
黒い綺麗な髪に不思議な雰囲気の男性が庭の柵の向こうに立っていた。

彼は微笑むと、正臣の事を手招きする。

まだ他人と会話をして良い、という許可は下りてはいなかった。
いかにも怪しい雰囲気の男。
けれど、正臣は様子を伺いながらそちらへと歩み寄った。

「あ…あんたは?」
正臣は完全に不審者を見る視線で目の前の青年を見る。
「俺?…俺は折原臨也。」
彼は少し細められた正臣の茶色い綺麗な瞳を嬉しそうに見つめる。
その視線が絡むと少年はまるで名前を聞いたわけではない、とでも言うように
臨也と名乗った青年に背を向け、家へと走り出してしまった。

一体どうしたのだろうかと、臨也は肩をほんの少しすくませたが、
さほど気にする事も無く歩き出す。
前々からここの家で人体実験が行われている噂は有名だった。
命を失った子供や、生まれてくる前に死んでしまった子供のパーツを
裏で買取り、そのパーツで人間を生み出す云わば本物の人造人間造り。
ずっとそんな事が成功するハズは無いと言われていたけど、
まさか、成功した…とか。
そんなまさかね。

何より、成功したならそれを学会でまず発表したりするはず…
しない、理由は………










昨日は少し熱があったけど、今日は少しだけ熱が下がっている。
体のダルさも少しはマシになった気がしなくも無い。
それにしてもこの体は本当に不自由だ。
仕方が無いのだけれど、体の色々なところが自分の物では無いみたいに、
なんだか全部がバラバラな感覚だ。
少しすればすぐに馴染むと父さんは言っていたけど…

「正臣」
「なに?父さんっ」

正臣は自分の作り主である白髪交じりで中肉中背の学者を父さんと呼んでいた。
目覚めた時に、そう呼べと教えられたからだ。
父さんはとても良い人だ。
自分をこの世界に産んでくれた。
そして、不思議に思った事はなんでも教えてくれる。

「ここへおいで」
彼はそう正臣を呼び、自分の膝の上に向き合うように座らせた。
これは最近よくある事。
彼は正臣の白いパーカーの中へ手を滑り込ませる。
「ふっ…くすぐったいっすよぉ」
胸の飾りを指で遊ばせて、その行動に正臣はいつも笑い声をあげる。
「体はもう十分成長しているのに、お前にはやはり…何かが足りない。」
いつもはそこまでで終わるはずだったのに、
彼はそう言うと、正臣のベルトへと手をかけそのままズボンを
下着ごと膝上程まで下げた。
「え、ちょ…何を……」
急な事にさすがの正臣もうろたえるが、そんな声には気にせず彼の手は正臣の
中心を掴み弄り始める。
「や、やめてくださいっ」
少し強引ながらも感じたことのないその感覚には何か嫌な、
後ろめたいものを感じた。
いや、本能的に何か凄く嫌な目に遭っているような気がした。
現状でも体がついていかない状態なのに、こんな事をされると
全てが崩れてしまいそうな感覚さえした。

「ん…っ……体が…崩れ……やめてくださ…いっ!!」

正臣が少し強く言うと、彼はハッとした表情になり、
おずおずと正臣に服を着せ始めた。
「いや、そうだな…まだ早い……ここで壊してしまったら……意味が無い。」
そう言った彼の瞳はとても暗く濁っていた。
その言葉もまるで自分に言い聞かせたような響きで、正臣は思わず息を呑む。
どうしてだろうか。
この人が、とても嫌な存在に感じられた。
理由は今の正臣には理解が出来なかった。


はあ…。
小さな庭でベンチに座ってため息をつく。
なんだか父さんと顔を合わせたくない。あんな顔は、見たくない。
気持ち悪くて、仕方…ない。
再び、「はあ…」とため息をついてゆっくりと顔を上げる。
一緒に視線をもち上げ目に入った庭の木の間。

「やあ」

あいつは……

「何か悩み事?俺でよかったら聞いてあげようか?」
彼は依然変わらないひょうひょうとした態度で正臣に声をかけた。
「ケッコーです」
正臣はとびきりの嫌な表情を見せたけれど、彼はそれに
「おお、こわいこわい」なんてふざけた返事を返して、正臣の機嫌は尚更悪くなる一方だ。
「あんた昨日といい、なんなんスか?」
正臣の庭の木の間の柵からこちらを覗く臨也に近づき目の前でしゃがむ。
その正臣を無視して、彼は家の中を覗き込む。
「いやー、それにしても良い家だねぇ。庭も綺麗だし?」
彼はあはは、と笑いまるで正臣の溢れ出る機嫌の悪さは気にもかけていない。
これにはさすがの正臣もイラッとして彼を見据えた。
「人の家じろじろ見て…いい加減に―――」
「何かあったんでショ?顔色、悪いよ?」


彼の細長い指が、正臣の頬に優しく触れる。


一瞬、何が起きたのかがわからなかった。
優しく添えられた手は、彼の口調からは微塵も感じられない程に、優しかった。
まるで別人の物。そう表現するのは少し違うかもしれないけど、
それ程にも感じた。

「いっ……いい加減にしろよっ!」

驚きと困惑。
その中で搾り出した言葉。
彼の手を振り切って、正臣は家へとずかずかと歩き出した。
その背中には怒りや困惑の色が見えていた。

どうしたら良いのかが解らなかった。何を言って、何を返せば良いのか。
きっとこれは自分が不完全な人造人間だから。
そう、思う事しか今は出来なかった。










あれから一週間。
父さんには何度か体を触られたりしたけれど、
あれからは上半身のみで済んでいた。
そして、それ以上の事が無いと解ると毎回安心する自分が居た。
作品名:夏ノワスレモノ 作家名:朝鍋うめえ