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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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Love yearns act1 USA side


俺が彼のことを「兄」ではなく「愛している人」と思い始めたのは
もう百年以上昔のことになる。
本当に小さな、彼が懐かしむアメリカの頃から俺はイギリスのことが好きだった。
もっともその頃はまだ「愛」という感情を知らなくて、恋しい気持ちの方が
強かったと思う。
一時期はあんまりにも恋しくて、日々を彼を想いながら泣きながら過ごして
あのまま目が溶けちゃうんじゃないかと周りの人に心配されるほど俺はイギリスを
恋い慕っていた。
それから何十年か経って、俺の身長がイギリスに追い付きそうになった時
俺はイギリスのことを「兄」から「愛している人」へと認識を変えたんだ。

きっかけはありきたりなもので、フランスから彼の愛の伝道師ぶりを
聞いていたときのことだった。
自らを愛の伝道師と言ってはばからないフランスは俺やカナダに愛とは何なのか
恋とはどういうものなのかをよく話した。
イギリスは教育熱心だったけれど、そういったことは一切教えてくれなかったから
フランスから聞く恋や愛の話は幼い俺やカナダには少し難しかったけど
ものすごく惹かれる話題だったから二人してうんうん唸りながらも聞いていた。
そしてある日、俺はフランスに尋ねたんだ。
「好き」と「愛」の違いはなんだろうって。
フランスは「坊ちゃんも難しいこと聞くねぇ」と言いながらも教えてくれた。
「好きは思考を伴った感情だな。どうしてあの人のことが好きなんだろうと考えるだろ?
 相手のことを考えて想う。理性の感情だね。
 愛はこみ上げてくるものだ。理由など要らない。その人を想うだけで
 こみ上げてくる熱情。愛は本能だ。アメリカ。お前にもそういう人が
 いるんじゃないか?」
たぶんフランスは俺をからかうためにいるんじゃないかって聞いたんだと思う。
だけど俺は気づいてしまったんだ。
理由のない、衝動のような感情。
俺がその感情を感じる人なんてこの世にたった一人しかいない。
―――――イギリスだけにしか感じない。

そんなわけで俺はイギリスのことを百年以上前から愛している。
この百数十年の間にいろいろあったけれども、この想いは変わらない。
そう。俺はイギリスのことをずっと昔から愛しているんだ。


Love yearns


はあ。
隠していた思いをうっかりため息にしてしまいアメリカは口を押さえたまま
慌てて周りを見渡した。
幸い、誰にも見咎められなかったようで安堵する。
(ため息なんてヒーローらしくないんだぞ)
常に前を向け。下を向いていては掴めるものも掴めない。
何よりもヒーローならば俯いている暇などないのだ。
それにしても暇だなとアメリカは資料を読み上げている日本に視線を向ける。
滔々と起伏なく話す口調は聞いているだけで眠気を誘う。
しかも日本の声は耳触りが良いから余計に眠い。
(いっそのこと眠るのもいいかもしれないな)
今回の議題はどちらかというとヨーロッパの連中に関係あるもので
アメリカは最初に合衆国としての見解を述べた後は座っているだけという有様だった。
おまけにここのところの景気の悪化のせいか、仕事は休む間もなく入り
会議に来る前も二日ばかり徹夜をして会議へ来る時間を作ったほどだった。
だが眠っていればまた口煩い男にねちねちと言われるだろう。
その口煩い男に視線を移したアメリカは目に入った光景にぎゅうっと眉根を寄せた。
「うっせえヒゲ。黙れ。黙んねーとその髭ぶち抜くぞ」
「おおこわ。相変わらず元ヤンは品が無いね」
「だ・ま・れ」
声のトーンは落としているものの向かいのアメリカの席まで聞こえるような音量で
イギリスとフランスは言い合っていた。
何時もの光景とはいえ、二人が言い合っている姿はアメリカの胸を締め付ける。
お互いのことを心底憎んでいるはずなのに、彼らのやりとりはアメリカには
とてもそういう風に思いあっているとは思えなかった。
むしろ一種の痴話喧嘩のようにすら見えた。
(・・・ムカつくなあ)
疲れた頭では躊躇いなど浮かばない。
むしろ嬉々としてアメリカは声を上げた。
「ホント、おっさんたちは仲がいいよね。でも、会議中にいちゃいちゃするのは
 止めてくれないかな?」
「はあ!?お前、どこを見てんなこと言ってんだよ!!」
「勘弁してよね。俺、イギリスといちゃいちゃとか単語聞いただけで
 おぞましさで鳥肌立つ」
「そんなの俺だっておぞましい!髭、一発ぶん殴らせろ」
「やーだね。お兄さんの美しい顔が崩れちゃう」
「一発や二発いれたら男前になるだろ。いいから殴らせろ」
「わーちょ、タンマ、タンマ!」
「―――――っ、いい加減にしなよね!!」
こちらに注意を向けたのはほんの一瞬ですぐに二人でやり取りを始めたことに
アメリカは目の前が真っ赤になるくらいの怒りを感じた。
馬鹿にされていると思った。
自分の入る隙などないのだと嗤われているような気がした。
そして気づいたら机を壊しそうな勢いで叩きつけて怒鳴っていた。
さすがにアメリカが本気で怒りだしたことに二人も気づいたのだろう。
目を見開いたイギリスと少し眉根を寄せたフランスにますます怒りがこみあげてきて
考えもせずに怒鳴ろうとしたとき、深い海のような静けさを湛えた声が遮った。
「―――――休憩にしましょう」
今にも爆発しような怒りに水を差したのは先ほどまで資料を読み上げていた日本だった。
燃えたぎる瞳を向けても彼の表情は凪無い。
机に叩きつけた拳をこわごわと開き、日本から顔を背けたアメリカは
何も言わずに席を立つ。
そのまま扉へ向かう背に誰かの声がかけられたが、振り返ることなく会議室を後にした。