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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「おい、おいアメリカ!!」
廊下に響き渡る声で呼ばれたがアメリカは無視して歩みを進めた。
今、彼の顔を見てしまえば何を言ってしまうかわからなかったからだ。
だが疲労の影響で普段よりもゆっくりとした歩みのアメリカは休憩室に入る
一歩手前というところでイギリスに肩を掴まれてしまった。
余程力を込めたのかアメリカの力をもってしてもその手を振り払えない。
仕方ないと諦めをつけてアメリカはイギリスに向き合う。
「なんだいイギリス」
「なんだい、じゃねぇだろ。何だよあの態度は」
フォレストグリーンがギラギラと光ってアメリカを映す。
どんな感情であれ、イギリスの瞳になんかしらの感情が浮かび、アメリカだけを
映すというのは言葉にならないほど嬉しい。
ささくれていた気持ちが少しだけ収まってアメリカは瞳を見返した。
「大事な会議だというのに無駄口を叩いていたからね。ヒーローが戒めてあげたのさ」
「仕方ないだろ。フランスの野郎が口を出してくるから」
「いい加減に止めたらどうだい?」
「・・・お前に関係ないだろ」
投げやりな言葉だったがその言葉はアメリカの胸中を効果的に抉った。
そうだ。そう言われてしまえばアメリカは何も言えなくなってしまう。
他の人に、例えば日本と俺の問題だと言われたら「何言ってんだい。
そう言ってもいつも俺に迷惑かけているじゃないか」と笑うことが出来るのに
それがイギリスとフランスだと言葉が出てこなくなる。
何者にも負けない無敵のHEROがたった一つどんなにあがいても勝てないもの。
この先幾年イギリスとの時を重ねたとしても彼らの絆には勝てない。
彼らの絆はこの平和な時代に築かれたものではなく、戦乱の世に血と涙を流し
いくつもの戦を経て築かれたもの。
その重さにアメリカが勝つことなどできないのだ。
「だったら俺に迷惑かけないでほしいね。いい加減我慢も限界だよ」
二人の絆に入り込めないアメリカがその悔しさを言葉に変える。
本当はイギリスにこんな言葉など向けるつもりはなかった。
ぎらぎらと輝いていた緑玉に涙の膜がうっすらと張られる。
泣かせたいわけではない。傷つけたいわけじゃない。
イギリスが泣けばアメリカだって泣く。
外に出すことは決してないけれど心の中では彼を恋い慕う小さな自分が泣いている。
泣くことの許されない今のアメリカに代わって泣いているのだ。
だからアメリカは笑う。
苦しいものも苦いものも呑み込んで。
愛おしく思う気持ちすら抑え込んで。
向き合うイギリスはそんなふうにアメリカが考えているなんて思いもしないだろう。
わあわあと責めたてるイギリスに心底うんざりだとため息をつく。
(何知らないくせに。キミはいつまでたっても俺の気持ちをわかろうとしないんだ)
「・・・・・・くたばれイギリス」
言いたいことは胸の中に。
実際に言葉にできたのはありきたりな罵り。
けれどイギリスには効果てきめんだったようで一瞬黙りこんだ後
兄に向ってくたばれとは何だと的外れなことをさらに騒ぎ立てた。
収まるどころか更に騒ぎ立てるイギリスを黙らせるため口を開こうとした
アメリカの口をするりと後ろから入ってきた手が塞ぐ。
誰の手かなんて考えるまでも無く勢いよく噛みつくと「痛いってアメリカ」と
まったく堪えてなさそうな声が耳元で聞こえた。
やはり考えるまでも無かった。フランスだ。
「はーいストップ。坊ちゃんばかり責めるのはフェアじゃないんじゃない?」
「フランス」
張り詰めた空気に割って入ってきたフランスは実にさりげない仕草で
アメリカとイギリスの間に割って入った。
うっせーよ髭と言いながらも僅かに安堵したような顔をアメリカは見逃さない。
アメリカだからこそわかるイギリスの安堵したような表情。
アメリカでは決して引き出せない顔。
胸がずきずきと痛む。
とっくに癒えたはずの心臓の傷まで熱をもって膿んでいるのではないかというほど
激しい痛みがアメリカを苛んだ。
イギリスがフランスにしか見せないであろう表情を目撃してしまうたびに
アメリカの心臓は軋む。
そんな風な専用の特別の表情なんて今のアメリカに対しては無い。
あったのは英領アメリカだったときのことでそのときのはにかむような愛おしさ全開の
笑顔はもうアメリカには向けられない。
代わりに向けられるのは冷めきった眼差し。外交上の取り繕った笑顔。
時には侮蔑すら含んでイギリスはアメリカに対する。
「合衆国」とナイフで突き刺すような声で呼ばれるたびに悲しみが膨らんでいった。
意趣返しに「連合王国」と呼んだが、イギリスは全く堪えることなく彼の言葉を
借りるならば「気安く呼ぶんじゃねぇよ。ガキが」といった態度を取られただけだった。
そういう時代に比べれば「イギリス」と呼ぶことを許され「アメリカ」と呼んでもらえる
今の時代は幸福に満ちている。
だからこそ、ずっと見ないふりをしていた彼らの絆を突き付けられることになる。
どんなに憎み合っていても、喧嘩していても切れたとしても、切れたままに
なることのない絆。
お前が切ったまま繋げない絆を彼らは何度でも結び直せるのだと言われているようで
気持ちが怯みそうになる。
―――――だけど、それではいけない。
怯むなんてらしくないじゃないかアメリカ合衆国。
胸を張れ。前を見ろ。立ち止まっていては未来は掴めない。
幾度となく言い聞かせた言葉を繰り返す。
自分が揺らいでは国を支えてはいけない。
個人の感情に由来するのならばなおさらだ。