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お前にもう一度愛を込めたキスを

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「馬鹿じゃねぇの」
「損得でプーちゃんの事が好きなんとちゃうねん。プーちゃんもそうやと思ってたんやけど」
 スペインが少し寂しげに笑う。それを見てしまったプロイセンの手が、いつの間にかスペインの襟元に伸びていた。
 なんなんだよお前は。どうしてそうあけすけな物言いをするんだ。
 スペインから向けられる好意は心地よくて。つい甘えてしまいたくなる。
 これだからスペインと関わり合うのは嫌なんだ、と自分の行動に対してプロイセンは思う。服の胸元を強引に引っ張りスペインを引き寄せると、プロイセンはスペインに顔を近づける。そして軽く唇を重ねると、すぐに手を離した。

「……プーちゃん、最後って言わんかった?」
「うるせぇよ。俺からする分には問題ねぇ」

 自分の行動だというのに自分で恥ずかしくなってプロイセンは首を左右に振る。急にそうしたくなったんだ、つべこべ言うな。
 おそるおそるスペインの様子を見ると、彼が照れたように笑っているのが目に入った。嬉しそうな顔をされてしまうと余計に恥ずかしくなるからやめてくれ。
「じゃあもっとプーちゃんからちゅーしたくなるような男にならなあかんなぁ」
「精々男を磨きやがれ」
 明るく笑ったスペインにプロイセンも強気な笑みを返した。
 おそらく言うべき事はこんな言葉じゃない。彼になら構わないと勝手に思って冷たい言葉を吐いた。今は幼い弟を一人前にする事を考えるので精いっぱいで、その為には片付けなければならない問題が山積みで、知らないうちに気が立っていたんだろう。だからと言って八つ当たりしていいはずがない。
「……スペイン……好きだぜ」
 自分から突き放しておいて、嫌われたと思った途端怖くなるなんて、馬鹿な話だ。スペインがドイツを攫ったんじゃなくて良かったと心から思う。不安で仕方なかったのはそれも一因だ。
「俺も好きやで、プーちゃん」
 何を都合のいい事を、と思いつつの告白に、スペインが嬉しそうに笑う。
「プーちゃんがまだ俺の事好きなんやったら、俺に諦める理由は全くあらへんな」
 スペインがプロイセンの肩を掴む。顔が近づいてきて、プロイセンは素直に目を閉じた。これくらいで何を今さら、と思いながらも閉じた拳や瞼に力が入る。肩に感じる指の感触とすぐ間近に感じるスペインの気配に酷くどきどきした。
 けれど、すぐ近くにスペインが近づいてきているのは感じるのに、なぜかあと少しの所でこれ以上距離を詰めようとして来ない。
「……しねぇのか?」
 だんだんじっとキスを待っている羞恥の方が勝ってきて、プロイセンはゆっくりと目を開けてしまった。分かっていたがあまりに近い所にスペインがいて思わずぎょっとする。
 スペインは緑の目をきょとんと丸くさせていた。

「せやかて、プーちゃんからじゃなきゃダメなんやろ?」
「いいから変なトコで止めるんじゃねぇよ! 恥ずかしいだろうが!!」

 空気読めこのバカ! と怒鳴ろうとしたプロイセンの口が何を言う間もなくスペインに塞がれた。スペインの野郎、今度は早えよ。
 と思うがその文句もスペインの耳には届かない。けど、まぁちゃんとキスをしてくれたから、それくらいは大目に見てやるぜ。