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できるだけ少なめのロマンスを

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ポケットに入れたipodを触りながら前をあるく山本を見た。綱吉が落とした鞄と自分の鞄を肩から下げて、後ろを向きながら野球のことを話す山本は沈む夕日に反射してるようにキラキラしていた。綱吉にはそれがなんだかいつもの山本と違って見えた。鞄を返してほしい、と山本に言うと「沢田、細ぇから持ってやるよ。」とまた嬉しそうに笑う。それに筋トレにもなるじゃん?と山本。そんな軽い鞄筋トレになるものか、とipodのスイッチをつけたり消したりした。

「あのさ、」
「なに。」
「ツナって呼んでいい?」

綱吉はすたっとその場で立ち止まる。

「好きにしていいよ。」

そんな事人にきくものだろうか。綱吉はアスファルトを見つめながら思った。
友達と言うものが自分にはよくわからないが、呼び名なんて言うものは自然にきまるものじゃないのか、綱吉はボソッと口に出しながら山本の横まで小走りした。

「でさ、ツナ」
「うん」

ツナ、と呼ばれなれて居ない綱吉は少しだけ違和感に顔を歪めた。別に嫌ではない、むしろ少しだけ嬉しい。なんだか友達みたいだ、そう思った。

「山本くんって呼ぶのやめてくんね?」
「え」
「山本でいいよ、ツナ。」

屈託笑う山本が本当に眩しい。こんな人間を、あいつらは利用してるのか、綱吉はフラッシュバックする教室での会話を思い出して手を握りなおした。



「ツナ!今日さ、一緒に帰ろうぜ。」
「え、でも山本。部活は?」
「今日はグラウンド整備だけだからさ。」

うん、じゃあ。教室でまってるね。と綱吉は山本に笑いかけた。すっかり山本が歩みよってから二人は一番の仲良しになって今まで関りもしなかったとは思えないぐらいだった。クラスの連中は特に干渉してこない、どうせ本当はどうでも良い二人だったのだ。山本にも綱吉にもクラスメイトの笑い顔が不気味に見えて仕方なかった。お互いがお互いを利用して生きていて、疲れる。二人は疲れていたのだ。いくら笑おうと無関心になろうと、それだけはいつも変らずにひっついて回った。
綱吉の山本への偏見もなくなり関わりを持つことで山本と言う人間がどんなに一生懸命で一途な人間であるかを知った。山本も綱吉の物静かな一面ではなく笑ったり怒ったりする部分を知った。どうして今まで友達になろうとしなかったのか、二人はそんな事を話しながら屋上で昼ごはんにありついた。

「じゃ、ツナすぐかたしてくっからさ。」

ブンブン音がするんじゃないかと綱吉は思うほど、山本は階段の下から綱吉に手を振った。綱吉も周りを気にしながらも小さく手をふった。山本といるとなにもかも新鮮だ。
名前で呼ばれはじめてから、山本は自分のことのように綱吉の机の落書を怒った。くだらないことするよな、笑ってごしごしと机をふく一生懸命な横顔を綱吉は泣きそうになりながら見ていた。今まで我慢していたんだ、嫌いな掃除もこなして、言いなりになって、悪口も聞こえないふりをして。全てに耐えていたのに、山本がまっすぐにぶつけてくる気持ちと言葉は綱吉のなかの我慢の壁をぶち壊した。
山本はヒーローだって言う、女子の会話に少しだけまざりたかったことがあった。こんな弱い自分にも、声をかけてくれて。綱吉も、雑巾をもってきて一緒に机の落書を落とした。
山本は、綱吉が無関心でいたんだと思っていたから、横目にみて綱吉の瞳にいっぱい涙が溜まっているのをみて凄く安心していた。人間らしいところを始めてみた気がする。綱吉も人間らしく振舞ったのはこれが最初だった。



「ばっか〜あいつまたツナと帰るって。」
「あーだから最近付き合い悪いんだー」
「いーじゃんいーじゃん一人くらいいなくったって、割り勘の数かわりゃしねぇよー」

だよなーギャハハ、綱吉は教卓の上に座る女子と男子数名の話をイヤホンをしながら聞いていた。山本が教室でまっててと言うから、しょうがなく、屯する奴らを無視して自分の席に座った。馬鹿みたいに大口あけて笑う奴、それに便乗して笑う女子。いつも悪口ばかり言う口。全てが綱吉には五月蝿かった。自分のことを言われるならまだ、しかし、大切な友達の悪口は許せなかった。
気が付くと綱吉はイスを倒して立ち上がっていた。連中が驚いたように目を見開いていた、綱吉はそんなことも気にせず、叫んだ。

「勝手なこと言うな。」

きっと震えていただろう、クラスメイトは何も言い返さなかった。何も話したことのない綱吉があのダメツナが大声で自分達に怒鳴り声をあげたことに心底おどろいたからだ。綱吉はぎゅっと目を瞑って、パチッと開いた。何かを思いついたように少しだけ重くなった鞄を肩にかけて教室を出ようとした、

「ツナ?」

ちょうど整備が終わって、泥のついた顔で戻ってきた山本の胸に顔をぶつけた。
小さな綱吉の顔がぶつかると山本はどうした、といわんばかりだった、教壇を囲んだ生徒達がぎょっとする、急にさっきまでの馬鹿騒ぎをやめ、いそいそと教室を出ていってしまう。綱吉は山本の胸の位置から顔を上げよとはしなかった。それどころか山本のほうすら見ようとしない。山本は困り果てて、とりあえずドア近くの席にツナを座らせた。怒っているんだろうか、長めの前髪の間から見える綱吉の眉間にはしわがよっている。山本は頭をかいて、綱吉の座ってる足元にしゃがみこんだ。

「どした?」
「・・・」

黙ってると、困るんだけどなぁ。山本がへラッと笑ってみせても。綱吉は此方を向いてくれなかった。さっきの連中に何か言われた?もしかしていじめられた、いやそれはもうないか、だって綱吉はそう言うことに関しては今まで無関心でいられたのだから。鈴木、藤崎、あと中村か。山本はその場にいたクラスメイトの苗字を指折り数えた。

「ツナ。俺と居ると辛い?」
「そんなことない!!」

俺といることで、陰口を叩かれるんだったら。そう思った山本はいつもはしないようなしゅんとした声で綱吉のぎゅっとにぎられた手を上から大きな手で覆った。しかし綱吉はばっと顔を上げて否定した。聞いたこともない大きな声だった。ツナ、こんなにデカイ声でるんだ、山本は悠長にそんなことを考えた。

「そうか、じゃあさ。さっき何があった?」
「・・・」

綱吉はまた黙りこんでしまった。本当のことを言ったら、山本が傷ついてしまうかもしれないと思ったからだ。

「俺には言えない?」
「・・・」
「、俺は信用できない?」

だからそんな事は言ってないと綱吉が顔をあげると、山本が泣きそうな顔で目の前に立っていた。綱吉はその嘘偽り無い山本の表情を見て言葉をつまらせた。一瞬で山本の顔はいつもの笑顔に戻る。帰ろうぜ、山本は綱吉の手を引っ張って椅子から立ち上がらせた。綱吉は山本の変る前の表情が脳内焼きついたようで、小さくうん。と呟いて教室を出た。それから前を歩く山本は綱吉の方を振り返らなかった。校門を出る前にグラウンドを見つめていた。「山本」かえろう、そういおうとしたとき——

「ごめん、俺やっぱ自主練してから帰るな。」
「え、」
「わるい。」

語尾がぴたりと切れると山本はグラウンドに走っていってしまった。