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チョコレート
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novelistID. 7958
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気のせい

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俺は踏み出した足を、何とか留めた。
いや、別に、話しかけちゃいけないワケじゃない。
別に何でもない。
何でもない………んだが。


「遅かったな相馬」

「うん。コレがどこにあるのか分からなくってさぁ。探してたんだ」

「倉庫内の手前の箱にあっただろ?」

「それが無かったんだよぉ。もぉ、すっごい探しちゃった」


会話はいつも通りだ。
いつも通り………なんだけど。
雰囲気が甘い。………気がする。


「そっか、お疲れさん」

そう言って、佐藤さんは相馬さんの頭をポンポンとたたいている。

「うん。とにかく見つかってよかったよ♪」

相馬さんは佐藤さんを見上げ、少し頬を染めてはにかんだ笑顔を向けている。



…なんだろう、すっごい違和感だ。
今までと違う!
何かが違う!!


周りに漂う空気がピンクっぽい。…いや、気のせいかもだけど。
佐藤さんと相馬さんの距離が近い。…いや、気のせいかもだけど。
佐藤さんの視線が暖かい、てゆーより熱い。…いや、気のせいかもだけど。
相馬さんの笑顔がとろけてる。…いや、気のせいかもだけど。
佐藤さんがいつもより男っぽい。…いや、気のせいかもだけど。
相馬さんがいつもより色っぽい。…いや、気のせいかもだけど。


あの二人って、そういう関係…? ………気のせいかもだけど!!!!




もう、何も見なかったことにしよう。
俺は何も気付かなかった。
気付かなかった。
気付かなかっ…!!





…仕事しよう。
今俺は、何も見なかった。


佐藤さんが相馬さんに、ふいにキスをしただなんて。


俺は見なかった。














作品名:気のせい 作家名:チョコレート