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木土
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墓標
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───再び風が起こった。
翻弄された彼岸花の群生が一斉に揺れ動き、無造作に切られた朱い髪も風に乗って舞う。
周囲のざわめきに目を移した斎藤が、再び傍らの青年へと視線を向けた時。
青年の姿は、もうそこにはなかった。
そこに在るのは彼の華と、朱色の髪の残骸に彩られた墓。
風に乗って舞い散る朱い筋を、斎藤はそっと掴んだ。
するりと指の間を潜り抜けてゆくソレは、まるで生きているようで。
男は沈みゆく夕日を一瞥した後、その場を去った。
幾筋かの朱色の髪をその手に携えたまま……。
了
作品名:
墓標
作家名:
木土