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Im in love

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恐れられることは、もう彼の人生においては当たり前のことであり、自分に関わる普通の人間は、「怖がっている」と知られることで静雄の機嫌を損ねると思うのか、大概その恐怖心を隠す。
それをこの少年は、いともあっさりと。
「俺の馬鹿力は、見たことあったよな?」
「はい。」
あっさりと肯定し、態度は一向に崩れない。

拍子抜けしながら、静雄の胸に僅かな期待が生まれる。
「じゃあ、何でお前は、その、怖いと思った俺と普通に話したりして、くれるんだ。」

「静雄さんのことが好きだからですよ。」

それは、先までの台詞となんら変わりのない、
まるで何でもないことのように発せられた。

「すごい力で重いもの投げてたり、人を殴り飛ばしてるの見て、自分に当たったり、自分も殴られたら痛いだろうなとか想像しちゃう時あるんで、そういう時は怖いと思いましたよ。でも、静雄さんはお話してると、すごく優しい人でしたから。僕はそんな静雄さんと仲良く出来るの嬉しくて、」
怖いとか、忘れちゃいました。

そういって、少年は困ったように笑った。

なんだか最初の方で、よく考えるとちょっと恥ずかしいことを言ったような気がするけど、静雄に問われての返答は、自分の中にストンと違和感無く収まった。自分の気持ちにも言葉にも嘘は無いのだろう。

さて静雄はと言うと、見事に固まっていた。
自分を見つめ、驚き顔のまま硬直している青年に、帝人はちょっと心配になる。
やっぱり変なこと言ったからかな。もう少しオブラートに包んだほうが良かったか。

長い沈黙を経て、静雄の硬直が解けた。
彼はふいに顔を伏せる。意志の読めないその行動に、帝人は伏せられた顔を伺うように身を屈める。
「・・静雄さん?」
何だろう。まさか爆発の溜めに入ったのか。怒られるのだろうか。正直に言いすぎてしまったか。気持ち悪いと思われてしまっただろうか。
と、ぐるぐる考えを巡らせていると、また唐突に静雄が伏せていた頭を跳ね上げた。その勢いに驚いて、帝人は思わず半歩下がる。

「竜ヶ峰!」
帝人を見る静雄の瞳には、その顔に浮かぶ疲労を霞ませる強い光があった。

「俺はお前が好きだ!」



静雄はそう叫んだ。

そうすることで、彼はようやく、自分の感情を確信した。


*********

愛してる、とまで勢いに任せて続けて叫びそうになったところで何故か新宿の情報屋を思いだし、言わずに止めた。

離れていたセルティにまで届くような告白を絶叫したあと、その場にいた三者は三様に動きを止めた。
内二名は事態を把握出来ず硬直し、残り一名であるところの静雄は、満足そうに息を吐くと、帝人の反応を待つように沈黙していた。

やがて帝人の脳が、静雄の発言の意味を計るため回転を始める。
「え、と」
先に、自分も言葉の上では同じことを静雄に言った。静雄も同じ言葉を返してくれたと思えば嬉しい。
「え、えっと、それは・・」
しかし、静雄の言葉のその意味は、自分のものとはニュアンスが、含んでいる意味が、違っているような、気が、いや、気のせいだろうか。ダメだ混乱してる。

「それは、その、どういう、意味で・・・」
ああ、我ながらベタな返しだな、と思う。
こちらに向けられる静雄の瞳には、揺るぎ無い光が宿っている。その光の中に、安堵にも似た色が見えた。
「お前にさっき言って貰ったのとは違う意味だと思う。でも、今お前が想像してるような意味で間違ってないと、思うぜ。」

静雄の瞳から目が離せないまま、帝人の頬に血が上り始める。じわ、と、刷毛ではいたようは朱が走る。

と、

唐突に、静雄が地面に腰を下ろした。
長い体躯を折り曲げてうずくまる。帝人が疑問符を飛ばして見ている前で、はあぁ、とまた、息を吐いた。
そしてそれきり、今度こそ本当に、静雄は沈黙した。

「え、え?し静雄さん?」
あまりに脈絡のない行動に、状況に、帝人はついていけない。
そのまま動かない静雄に近寄って、肩を遠慮がちに揺する。すると青年の身体は、バランスを崩し横ざまに倒れた。
「わあぁ!?静雄さん!どうしっ・・・」
『静雄!?』
慌てて倒れた静雄に取り縋る帝人。
静雄の異変に、二人の元へ、ようやく硬直の解けたセルティが駆け寄ってくる。






静雄は、


「ぐう。」



熟睡していた。



「え、・・・寝て・・?なんで・・?」
そういえば、今日会った時から静雄の顔には疲労の色があった。そんなに疲れていたのだろうか・・・?
『あ・・・静雄、ここ一週間近く、寝不足だったって・・・。』
セルティがおずおずと、PDAで教えてくれる。
なるほど、先ほどのやりとりで張っていた気が解けたのか。それでこんなことに。
それにしても、ものすごく安らかな顔で眠っている。
静雄に取り縋ったまま、帝人は彼の寝顔を見、そう思って、彼もまた一つ、息を吐いた。


どんなに呼んでも揺すっても起きないので、タクシーを呼んで、新羅のマンション近くまで付けてもらい、セルティと二人で青年を運ぶことにした。
二人で苦労して静雄を担ぐ。タクシーの運転手が見兼ねて手伝ってくれた。

セルティの影を使えばもっと楽に運べるそうなのだが、さすがに街中で人目がある。
そういう理由で、『新羅のマンションに運ぼう』というセルティの提案を採用することになった。

無事マンションに到着し、影を使って空いている寝床に静雄を転がす。もう遅い時間になってしまったし、泊まっていってはどうかというセルティの誘いを、帝人は有り難く受けることにした。

色々なことがあり過ぎて、心身ともに随分疲れたように思う。
その大方の原因である青年は、ベッドの上で暢気そうに眠っている。
少年にはこれから、たっぷりと悩まなくてはならない案件を残して。
お茶を淹れて少年に対面するソファに腰掛けた妖精は、どことなくそわそわとしているし。

手元に置いたPDAがうずうずしてますよセルティさん。
聞こえたかなぁ・・・この様子じゃ聞こえたんだろうなぁ・・・。けっこう近くに居たしなぁ。

まぁ、どうせあの告白を聞いていたのなら、説明することなどほとんどなにもない。
弁明なんてものも、皆無等しい。

強いていうなら、

僕は存外、静雄さんの告白に、嫌な気持ちなんて全然してなくて、むしろ嬉しいと感じてしまっているんですが、どうしましょうね、なんて、相談したいところだな、と、帝人は思った。

静雄は翌朝、夢も見ることなく、久しぶりに爽やかな目覚めを迎えたという。

その後起き出していったダイニングで、セルティと一緒に台所に立っていた帝人と顔を合わせた途端、ベランダから飛び降りようとしてセルティの影で簀巻きにされたとかされなかったとか。

END
作品名:Im in love 作家名:白熊五郎