朱璃・翆
「いや・・・。なあ。お前ってさあ、初めてしたのって、いくつの時だ・・・?」
「おっと。マジで酔ってんのか?珍しいな、お前がそんなん言うの。えーと、確か・・・15ん時だったかな・・・?」
「そう、だよな。まあ、そんなもんだよ、な?最初っから、その、色々手馴れた感じに出来るものなのか・・・?」
「いやーそりゃ無理だろ?俺もさー、初めの頃はどーしていーのか分かんなくってよー。誰もがそうじゃね?未だにそうそう自信あるって訳じゃねえしな?つーか俺らの歳でさー、手馴れて自信満々って、どんだけ経験豊富なんだって話だろ?」
「・・・そう、だな・・・。」
僕もシーナも今は19歳(と言っても僕は見た目は15、16位のままだが)。
しかもシーナは成功率は知らないがナンパばかりしているような遊び人。
そんなシーナですら自信満々とは言えないと言う。
・・・朱璃は明らかに自信に満ち溢れているような感じだった。しかも慣れた感じで余裕すら感じられた。
勿論最後までされたわけではないが・・・。
僕はまた赤くなった。
・・・おかしい・・・。
僕は・・・朱璃が・・・?
「何だよ、マジ酔ってんの?・・・なんかお前・・・えーとさあ、あんまし人前で酔わないほうがいーんじゃねえ?」
「いや、酔っているわけではないんだが、なぜだ?なぜ人前を避けたほうがいいんだ?どこかおかしいのか?」
「いや、怒るなよ?なんつーか、その、赤くなってっとなんか色っぽいっつーか・・・。」
「・・・貴様・・・。」
「いや、だから怒るなっつっただろ?悪かったよ。な?このとーり。」
僕が棍をつかもうとするとシーナは慌てて手を顔の前で合わせて謝ってきた。
まったく。
僕はため息をついて棍をまた横の壁に立てかけた。
「そーいやさあ、俺女郎屋で妙な噂聞いたことあるな。」
「・・・どんな・・・?」
「いや、誰にも言ってねえんだ、ここだけの話な?てゆーのがさあ、なんとなく朱璃に悪くてさー?なんかな、朱璃ってわけじゃないんだけど、外見聞いてるとよく似てるんだよな。大分前の話だけどさ?小柄で綺麗な要は朱璃みたいな少年がさあ、一時色んな女郎屋に来ては片っ端から相手してって相手の女骨抜きにしてったっていう、もはや伝説みたいな話なんだけどよお。」
・・・なんだか、噂でも伝説でもなく、本当の話のような気がしてならない。
「まあ、ホントの訳ねえわな?だってよー?14、15歳程度のガキだってんだぜ?それがおたおたする訳でもなく、片っ端からやってって、しかも骨抜きってんだぜ?ありえなくね?」
「・・・は、はは・・・。」
「わあ、ホントだったら凄い話ですねー?」
「っわあっ。」
「おお?なんだ朱璃じゃねえか。って何で翆がそんなびっくりすんだ?でもさ、ありえねえだろ?悪りいな、朱璃。お前に似てるなんて言って。変な噂になったら悪いから誰にも言わなかったんだけどさ、翆ならいいかなって思ってさ。」
「いいえー?すいません、余計な気使わせちゃって?シーナって優しいですねえ。」
「お?なんだ、そんな事言うなよ、期待すんじゃねえかよ、悪り、翆。俺変な気起こす前に誰かナンパして来るわ。んじゃな、お2人さん。」
シーナはそう言って笑って去っていった。
シーナ・・・お前ホントいい奴だけど、勘違いしてるから・・・。
今の状態で僕を置き去りにしても、ありがたくもなんともないよ・・・。
ただでさえ朱璃の事を・・・って気付いたばかりだってのに・・・。
僕はまたため息をついた。
「やだなあ、僕のいないところで噂話ですか?」
「いや・・・その、たまたまだ・・・。でも、今の話は・・・お前の事だろう・・・?」
「ふふ?なんだったら試してみるか?」
僕の前でこっそりそう言って、朱璃は妖しく笑った。
僕は自分の顔が熱くってどうしようもなかった。