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愛してるとは言わない

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いつからかなんてわからない
しいて言うならば初めて興味を持って出会った時だと言うだろう

俺は新羅を、愛している

「はーい、あれ、臨也じゃないか。今日はどうしたんだい?」
「コンバンワ、どうしたんだとは酷いな・ぁ・・君が言っていたビデオ、持ってきてあげたのに」
「わあ、凄く助かったよ!ささ、入って!」

今日は彼女がいないからかすんなりと中に入れてくれた
彼女はいつ戻ってくるんだろうか
新羅は消してしまったらしいビデオを嬉しそうに受け取り、俺を部屋の中に招き入れる
リビングに行くと遅めの昼食を取っていたのかテーブルに素麺がおいてあった

「・・・新羅、今は晩秋だと思っていたのけれど」
「そうだね、でも夏の残り物はきちんと消化しないとね、コーヒーでいいかい」
「お願いするよ」

ソファに腰を下ろし、携帯を確認し、再びポケットにしまいこむ
背もたれに重力を預け、コーヒーを用意している新羅を眺めた

いつからだろうか、新羅に興味を持ったのは

中学一年になったばかりの頃は特に興味はなかった
学校側にお願いして全校生徒の名簿を手にし、多くの愛すべき人間の一人だった彼
別のクラスだったし、特に接触もなかったから

あの頃は人間が愚かで面白くてすごく楽しい生き物で、俺はとてもとても愛し
ていた
その事実だけで俺は酷く満足していたんだ

新羅に意識して出会ったのは一年の二学期の時だ
学校の裏庭で告白されてる場面を校舎の二階から見かけた時
あの頃は人当たりもまだよくてにこやかな仮面の笑顔に騙される人が多かった
俺もそれなりにモテていたし、彼もそうだった

「どうして?!なんで私じゃダメなの?!」

ヒステリックに少女は叫んだ
自分を受け入れなかった少年に向かって

なんて見苦しいんだろうか
勝手に押し付けてくる感情は酷く醜い
しかし、それを当然のように言い放ち、己は間違っていないと思い込んでいる
醜いなぁ、浅ましいなぁ、愚かだなぁ、無様だなぁ、楽しいなぁ、面白いなぁ、愉しいなぁ!!!

面白くなっていきて窓に頬杖をついて、下を観察する
さあ、秀才の岸谷君はどう返事を返す?

「・・・だって、君には首から上がついてるでしょう?」

彼の言葉は衝撃的だった

人間から首から上をとれば何が残る?
表情も言葉も耳も鼻も口も脳も
全部なくなってしまう、死んでしまう
ただあるのは何もいわない動かない肉塊だけ

何故彼はそんなことを言ったんだろう

それは自分の人間のことを何でも知りたいという欲が新羅に向けられた時だった
涙を流して去っていった少女には目もくれず、彼のもとへ二階から飛び降りた

「ねえ!岸谷新羅君!」
「え?」

俺から声をかけた
そして、彼と友人になった

作品名:愛してるとは言わない 作家名:灰青